トヨタとスズキが組めば、インドでは最強だ 小型車に強いスズキとトヨタが組む意義

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――インドにも、ヤクザがいるのですか

はい。インド西部に多く、特にムンバイ周辺です。例えば、カネや権力のために爆破テロをする有名な極悪人がいますが、その子分達もムンバイで不動産事業をやっています。なかには、国有地に勝手にショッピングモール建てたりして問題になったりしています。

少し話が飛びましたが、ディーラーの開拓というのは、とにかく土地探しだけでも大変でどの企業も苦労しています。多くの場合、クルマを売る店舗だけでなく、修理や点検などのサービスを行うピット(整備場)が必要となります。その場合は工業用地でなければなりません。

両者の提携に必要なもの

須貝信一(すがい しんいち)/1973年生まれ。法政大学英文科卒業。外資系IT企業、インド関連コンサルティング会社にて取締役として事業の立ち上げ等を経て、現在はネクストマーケット・リサーチ代表取締役

これに販売戦略、商圏範囲、人口動態、客の動線等の通常の立地戦略を重ねつつ、物件探し、土地の収用、法的手続きが大変になってくる。こうした背景もあり、最近はピットが数十台分、100台分などの大型店舗もあります。いい土地があれば、もう「まとめて営業しよう」という感じです。

特にトヨタは他社と異なり、現地法人ではなく本社の専門部隊がインドに来て立地調査をしますが、条件のそろった土地を見つけるのは容易ではありません。今後の販路拡大というのは、より小さな市や町への出店になっていきますので、その地域ごとで土地事情に精通している必要があります。

むろん、価値を共有できるいいディーラーをみつけて採用、契約していく必要もあります。スズキのように、3000店のネットワークで地方の小都市の隅々にまで販路を持ち、機能させ、ディーラーにも儲けさせるということは、他社はできません。

――インドでの販路開拓は一筋縄ではいかず、スズキが大きくアドバンテージを持っているということですね。

逆にそれを利用できるようなことがあれば、トヨタにとって大きな利益になります。先行優位、圧倒的ナンバーワンの強みを持つスズキはインド市場がどのような状態でも利益を出せます。

一方でトヨタは、利益の出し方は異なりますが、長い目でみて無理をせずやっているといったところです。持続力がある2社ともいえるのですが、本当に連携すればそれは最強なのではないでしょうか。

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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