凶と出るか吉となるか 小沢取り込んだ鳩山新代表

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凶と出るか吉となるか 小沢取り込んだ鳩山新代表

塩田潮

 民主党の鳩山新代表に会った。代表選の翌朝のテレビ番組に一緒に生出演した。小沢問題発生の数ヵ月前、インタビューする機会があったが、そのときは少し人相が悪くなったなあと思った。くせの強い腕力型の小沢代表の下で長期間、女房役と党内との橋渡し役を受け持つと、好人物の鳩山氏でも人相が変わるんだなと勝手に想像した。だが、今回、久しぶりに会って、印象が違った。「党首」「首相候補」の重圧を背負ったはずなのに、むしろすっきりとした感じで、昔からの屈託のない表情だ。これには驚いた。代表選勝利の高揚感や、要職を担う緊張感よりも、小沢代表の下支え役という難仕事を終えた解放感のほうが大きかったのかもしれない。

 とはいえ、今後も小沢氏との距離の取り方が新代表の最大の課題だ。鳩山氏は番組の中で、小沢氏の献金問題の説明責任について「5月中に説明を」と明言した。一方で、小沢氏にすぐに「選挙担当の筆頭代表代行」という座を用意した。鳩山氏には2002年12月、代表選勝利の3ヵ月後に辞任に追い込まれたという苦い挫折の体験がある。原因の1つは人事の失敗だった。番組で「失敗の教訓をどう生かすのか」と質問したら、「今度はあの代表選と事情が違う」と語った。代表選の選挙事情や民主党の党勢だけでなく、以後の苦節6年半で円熟味が増したという自身の変化など、いろいろと事情が違うと言いたかったようだ。だが、リーダーシップを発揮できなければ、失敗の二の舞いとなる。

 今回は、小沢氏を野に放たず、引き続き舞台に立たせることにした。野に放って「猛獣」が外で暴れたり、にらみを利かせるよりも、首に鎖を付けて仕事をしてもらうほうがいいとの判断のようだが、鳩山代表に「猛獣使い」の力量が備わっているかどうかが試される。次回は90年代以降の「猛獣使い」と「猛獣」の力学を振り返ってみたい。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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