トヨタ、提携戦略で克服すべき「上から目線」 ダイハツ「完全子会社化」の真の狙いとは

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さらに「トヨタには自前主義が根強く残っている。小型車を(ダイハツに)お任せするということでも、社内にわれわれにも(小型車の)歴史やノウハウがあるというのもある。だが、もっといい車を作ろう、といったときにダイハツと一緒にやることで違った景色が見える」

これらの発言はトヨタ社内へ向けたメッセージであり、豊田社長の問題意識が見て取れる。

スズキとの関係は言及なし

一方、提携交渉が報じられているスズキについてはコメントを避けた。トヨタとスズキの提携交渉入りを日本経済新聞が一面で報じたのは1月27日の朝刊。これに対し「提携交渉に入ったという事実はありません」(スズキ)、「そのような事実はありません」(トヨタ)と両社とも否定したが、メディアの報道は続いている。

スズキの鈴木俊宏社長は、トヨタとの「交渉」に進むのか(撮影:今井康一)

実際、トヨタとスズキが提携について検討していることは確かだが、現時点では具体的な条件を詰めるところまでは行っていない。「交渉」の定義によるが、「検討はしていても交渉はしていない」というのが実情に近いのだろう。

スズキとの話が進むにしろ、停滞するにしろ、ダイハツのライバルであるスズキといきなり深い関係を築くのは難しい。トヨタの狙いとして挙げられるインドでの提携にしても、スズキの鈴木俊宏社長が「大黒柱」と位置付けるインド市場に、わざわざトヨタという"虎"を招き入れることに力を貸すだろうか。あってもスズキがOEMでトヨタに協力する程度と考えるのが妥当だ。

ダイハツとの完全子会社化にも50年かけたトヨタ。スズキとの関係強化も長期スパンで考えているに違いない。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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