北海道新幹線はどんな訓練運転をしているか 「貨物列車と共用」という前例のない挑戦

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今年元日には貨物列車も運行試験を行った(撮影:久保田敦)

苦労は、計画的に避けられるものだけではない。営業時間帯のダイヤが乱れると、訓練運転を中止して遅れた列車を通すのか、遅れた列車を翌朝に回して訓練を実行するのか、あるいは訓練運転を少し遅らせてスタートさせ、遅れの波及は翌朝の営業開始後に調整するのか――などの判断が迫られる。

そのためには、訓練開始前の運転状況を逐一追っておくことが必須であり、対処も日によって一様ではない。そのオペレーションは、JR貨物やJR東日本にも影響を及ぼすものであり、最も神経を遣う部分であると言う。

今の時期、二冬目の冬期試験も交えてスケジュールは濃密になっている。さらに、長距離の貨物列車は降積雪の影響を受けやすく、日本海縦貫線経由の列車はことさらリスクが高いだろう。順調に進めば2月いっぱいで完了するとされる訓練運転の計画だが、3月の開業直前までの日程を確保しているのも、そのためである。

北陸新幹線よりも長期に

設備工事が完成して新幹線車両を初入線させてから開業までの期間は、九州新幹線博多開業時の約6か月、東北新幹線八戸開業時の約8か月に対して北海道新幹線は約17か月をかける。同じく二冬の冬期試験を組み込んだ北陸新幹線の場合の15か月よりもさらに長期に及んでいる。

貨物列車との共用走行は、開業後も大きな課題を突き付けている。新幹線電車の最高速度が時速140kmに抑えられたのも貨物列車とのすれ違い問題によるもので、国土交通省は、技術対策を施して2018年春にまずは1往復の速度向上を図るとしている。

しかし、高速運転の最大のベースとなる線路には重量貨物列車が昼夜を分かたず走り、従来の新幹線であれば深夜0時から朝6時まで確保される保守間合いが、やはり短時間に限定される。ゆえに、容易には速度向上の断は下せない宿命を抱えているのである。

鉄道ジャーナル編集部

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車両を中心とする伝統的な鉄道趣味の分野を基本にしながら、鉄道のシステム、輸送の実態、その将来像まで、幅広く目を向ける総合的な鉄道情報誌。創刊は1967年。

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