核保有した北朝鮮、金正日は核放棄せず、流出阻止が最大の課題

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IAEA査察再開が喫緊の課題

一方、北朝鮮は、使用済み核燃料を再処理して核分裂物質を作り出す態勢を整えるのに苦労するだろう。寧辺の核施設の一部は6カ国協議の結果無能力化され、ほかの施設も老朽化で機能が低下している。これらの施設が復旧・再稼働するには半年から1年かかるだろうと専門家は見ている。日米両国としては、その前に6カ国協議の再開提案も含め、いくつかの方策を講じるべきだ。特に喫緊の課題は、北朝鮮に国際原子力機関(IAEA)の査察官が寧辺の核施設に再び入るのを受け入れさせることと、北朝鮮の兵器級核燃料製造能力を弱体化させることだ。

国際的合意は、北朝鮮の核開発を阻止はできなかったが、引き延ばしには確実に役立ってきた。現在の状況が金正日体制に不利だということを考えれば、核開発をさらに引き延ばすことは重要だ。またそれと並行して、日米両国は「拡散に対する安全保障構想」を活用し、北朝鮮による核物質と核技術の拡散を阻止する取り組みを強化する必要がある。

さらに日米両国は、日米の一方を標的にした将来の弾道ミサイル発射を効果的に追跡できる合同情報センターを設置し、それを運用する統合された指令管理システムを整備すべきだ。そのためにはミサイル発射という非常事態に備えるかぎりにおいて、という限定付きで、集団的自衛権の制限の緩和が必要となろう。

アメリカも核の傘の有効性を日本に強く説いて日本を安心させるべきだ。北朝鮮が日本を攻撃すれば、必ずアメリカが即座に対応する。これは日本の一部に存在する核武装願望を鎮めることに役立ち、その結果、不安定要因である北東アジアの兵器開発競争を抑えることに寄与する。

最後に、日米韓3国にできれば中国も加えて、北朝鮮国内の秩序が崩壊する可能性、とりわけ政権移行が失敗した場合に備える広範な危機管理計画の策定に着手すべきだ。難民危機に対処することと北朝鮮の核、およびその他の大量破壊兵器の流出を阻止することは、極めて重要な課題となるだろう。

(ピーター・エニス =週刊東洋経済)

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