ソニー8年ぶり好業績も、「完全復活」に暗雲 事業ごとに好不調が混在、収益柱が急減速

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ソニーの業績を牽引してきたイメージセンサー。2015年11月頃から急減速している

そうした中で、第3四半期のデバイス事業の営業利益は514億円と前年同期比で約半減し、通期見通しを同390億円に下方修正。上期の貯金で黒字を維持するものの、下期だけでは赤字転落となる見込みだ。業績悪化の理由には、電池事業関連の減損306億円も含まれるが、イメージセンサーの減収も大きな痛手となっている。

「スマートフォンの市場成長が高価格帯において減速している。特に11月以降、主要顧客からの需要が減少したことが大きく影響した」と、吉田CFOは落ち込みの原因を説明。この需要減は主にiPhoneの販売減速を指すものとみられる。加えて、主要顧客向けセンサーは専用の設計を施したカスタム品のため、他の顧客への出荷に充てられなかったことも事態を悪化させた。今年度予定していたイメージセンサーの投資計画を一部減額するとし、近年続いていた積極投資に待ったをかける形になった。今後はスマホ市場の成長鈍化を前提に計画を策定することとしている。

スマホ向け以外の用途で成長できるか

スマホ市場の成長が一服したとしても、イメージセンサーはIoTや車載カメラ向けに販売拡大が見込まれ、「イメージセンサーは短期的な調整局面を迎えているという認識」(吉田CFO)と、成長の牽引役としての位置づけは変わらないとする。しかし、IoTや車載向けは事業化までに時間を要し、スマホ向けの縮小を補うのは現状難しい。

さらに、イメージセンサーの成長に合わせ、カメラモジュール事業(カメラ周辺部品の組み立て事業)にも参入していたが、こちらもスマホ減速による影響は避けられない。決算会見において、モジュール事業に関連する固定資産約640億円のうち、ある程度の減損を強いられる可能性を示唆した。

テレビやスマホ事業で海外大手との戦いに敗れた後、「脱エレキ」に舵を切って復活を遂げていたソニー。その立役者のイメージセンサー失速は、さらなる成長に大きな疑問符を投げ掛けることになる。

みずほ証券の中根康夫アナリストは、「今回は逆風の中、通期見通しはデバイス以外は上振れた。これまでの構造改革効果や現在の経営陣の事業管理・運営能力によるところが大きい」と評価。一方で、「デバイスはiPhone販売の停滞、スマホ市場の飽和を受け、どのように戦略を変えていくのか、設備投資やR&Dなど支出・コスト面でどのような対応を取るのかきっちり説明することが大事」とした。

一時的な調整局面か、はたまた収益柱の喪失か。スマホ以外へイメージセンサーの用途拡大を急がなければ、「ソニー復活」は砂上の楼閣になりかねない。

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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