川村隆・日立製作所会長兼社長--総合電機路線とは決別へ、本体への公的資金はない

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--東芝はWHを買収しましたが、日立はGEとの提携です。日立の自由度の束縛になりませんか。

束縛にはなりますが、原子力は政府間の交渉が相当ある。原子力は核物質や核兵器、核拡散防止条約がありますから。米国政府とのある種のつながりが必要。それもあって誰かと組まないといかん。

--日立は日本でも社員の博士の数はトップクラスで特許の数でも有数ですが、とがった製品がなく、収益力も低い。何が悪いのでしょう。これをどう変えていきますか。

エレクトロニクス分野などはよい研究成果があっても、大量生産のうまい製品になって出ていかない。研究成果を製品にする“つなぎ”が下手。だけど、社会イノベーション事業は割合上手にできる。大量生産ではなく、お客さんの話を聞きながらモノを作っていくのは得意です。

ただし、利益をもう少し出さないとダメ。電力や鉄道は特定案件で大きく失敗して全体を損ねていました。海外プラント建設事業強化本部を設置し、リスクを押さえ込んでいきます。

--川村社長は古川一夫前社長より7歳上。副社長陣も子会社から戻された。未曾有の不況を経験豊富な布陣で臨まれるとのお考えですか。

日立はグループ会社が多いという特殊性がある。上場子会社16社を含め中核子会社だけで40社近くあります。

資本は出すが、口は出さないので頑張れというやり方で大きくなってきましたが、大きく傷んだ連結のバランスシートを立て直すには、グループ全体での最適化が必要。財務の日立に戻さないといかん。

ただ、グループ会社のメンタリティは独立自尊なので、その彼らを説得するのは、グループ会社を経験した人間のほうがやれる。私はグループ会社との関係を直すという会長業務をメインでやろうと思っています。会長としてなら、そんなむちゃくちゃ高齢でもないですよ。

(鈴木雅幸、石井洋平、山田雄大 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

かわむら・たかし
1939年生まれ。東大工卒、日立製作所入社。電力事業部を歩み、92年日立工場長。99年副社長。2003年以降は本体取締役となり日立ソフトウェアエンジニアリング、日立プラント建設、日立マクセルの会長を歴任。07年に本体取締役退任。09年4月会長兼社長に就任。

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