「フルグラ」ブームが映す健康食志向の変化 カルビーのシリアルはなぜ売れているのか

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日本人はとても努力が大好きで、いろんなことで努力をしているという姿勢を示そうとする。健康についても同じで、さまざまな健康情報を仕入れてはそれを試す。そうした中で努力すればするほど、つまり手間をかけたり時間をかけたり、そしてお金をかけたりすればするほど、より完全な健康に近づくと考えがちなのである。

そうした人たちにとっては、シリアル食品で簡便に健康的な食生活と言っても、納得してもらいづらい部分がある。

もちろんさまざまな健康法を試した結果、健康になればいいのだが、実際は高すぎる理想の健康的な生活が実現できずに、それがストレスになってしまったり、または必要以上にお金や時間をつぎ込みすぎ、散財してしまったりする結果になりがちである。

また、自分は努力をしているという気持ちばかりが先走ると、ほかの人の食生活を不健康であるとむやみに非難してしまったり、運悪く病気になった人に対して「健康に気をつけなかったからだ」と説教をしてしまったりして、周りの人たちとの軋轢を生むことすらある。

偏食なのに、健康診断では異常がない人もいる

実際には、不健康そうな生活をしていてもさほど健康に問題のない人もいれば、健康的な生活を心がけても病気にかかってしまう人もいる。テレビに引っ張りだこのマツコ・デラックスさんは、あの巨体で食事も肉や魚は食べられず、炭水化物大好きという偏食ぶりだという。さぞ不健康だと思いきや、「健康診断では異常がない」とテレビで話している。

また1995年まで、ギネスブック公認の世界最長寿であった105歳まで生きたとされる泉重千代さんは酒と煙草が大好物だったという記録がある。つまり健康というのは単純に食生活だけで決定されるわけではないということだ。

こうしたことから、健康に気をつけなくてもいいとは言わないが、少なくとも健康をあまりに気にかけた食事ばかりをする必要はないし、単純に「努力=健康」というわけではないと言えるのである。

健康的な生活を送るためには、バランスのよい食事が必要であるとはいっても、あまり細かくこだわりすぎても疲れてしまい、本当に効果があるのかわからない。だからこそ、麦やコーン、そしてドライフルーツなど、多くの食品を含み、乳製品も一緒に取れるフルグラが好まれているのは、消費者が健康のための努力という虚勢よりも、実際に健康的な食事を取ろうとする冷静な選択をしているのだろう。

赤木 智弘 フリーライター

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あかぎ ともひろ / Tomohiro Akagi

1975年栃木県生まれ。2007年にフリーターとして働きながら『論座』に「『丸山眞男』をひっぱたきたい――31歳、フリーター。希望は、戦争。」を執筆し、話題を呼ぶ。以後、貧困問題などをテーマに執筆。主な著書に『若者を見殺しにする国 私を戦争に向かわせるものは何か』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』などがある。

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