生保業界の見通しはネガティブ:ネガティブ要因がポジティブ要因を凌駕 《ムーディーズの業界分析》


金融機関グループ
AVP−アナリスト 三輪昌彦

 比較的安定的な営業環境、金利リスクの低下といったプラス要因がみられるが、株式市場の下落による資本毀損リスクが大幅に上昇しているため、日本の生命保険業界の見通しはネガティブと考える。

 2008年3月期、国内株式市場は前年度末比で約3割下落しており、これが一般勘定にある国内株式を中心とした、有価証券含み益の大幅減につながっていた。含み益というバッファーが大幅に減少した結果、更なる株式市場の下落時の資本や利益の毀損リスクが上昇していた。そして2009年3月期、国内株式市場の下落は止まらず2008年3月期よりも大幅な下落となり、日経平均株価が1982年以来の最安値をつける局面もあるほどであった。その結果、含み益の減少あるいは含み損の拡大による資本毀損リスクが大幅に高まっている。

 一般勘定における株式保有に加えて、最低保証型変額年金保険を介した株式リスクもあるが、国内大手生命保険会社の場合、一般勘定における資産運用リスクと比べれば当該リスクは限定的といえる。しかし、最低保証型変額年金保険については、収益性の状況が懸念材料である。当該商品においては、保険会社の収入(契約者が支払う保険契約関係費)が積立金の水準に連動している仕組みのものが一般的であるため、市況の悪化(収入のベースとなる積立金の低下)により保険会社にとっての収益は低下することになる。

 また、昨今においてはヘッジコストが上昇しているとみられ、ヘッジコストの上昇時には再保険料率や内部リスク管理上の必要資本も上昇しているものと考えられる。商品販売に伴うコストが上昇しているにもかかわらず、競争が激しいことから、保証料率(保険契約関係費)の引き上げも難しいと考えられる。一般に顧客サイドからみた保証料の高さ、という点に注目が集まることが多いが、足元の金融環境が続いた場合、生命保険会社からみた保証料、すなわちリスクに見合ったリターンを得ることの難しさも注目すべきと考える。特に、保険会社にとってのリスクが高い商品あるいはリスク管理が難しい商品、逆に言えば保険契約者にとって極端に有利な仕組みの商品を販売している場合、現在の金融環境においては、収益性ひいては財務基盤が以前よりも厳しい状況にあると考える。

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