甘利氏辞任でアベノミクスはどうなるのか

海外勢は政策実行力の弱体化を懸念

 安倍晋三内閣の重要閣僚としてアベノミクスの強力な推進役だった甘利明氏(写真左)が、閣僚辞任を表明した。右は安倍首相、国会で22日撮影(2016年 ロイター/Toru Hanai)

[東京 28日 ロイター] - 安倍晋三内閣の重要閣僚としてアベノミクスの強力な推進役だった甘利明氏が28日、閣僚辞任を表明した。これまでアベノミクスを評価して日本株を買ってきた海外勢からは、政策実行力の弱体化を懸念する声が浮上している。

また、甘利氏が力説してきた税収増の活用路線が影響を受けるのかどうか、政権内のバランスの変化にも注目が集まりそうだ。

甘利氏は、この3年間で大幅に日本株を買ってきた海外勢にとって「アベノミクスの宣伝役」(外資系証券の関係者)と映ってきた。実際、スイスで開かれていたダボス会議には多忙な安倍首相の名代として出席し、「新3本の矢」をアピールすることになっていた。

しかし、降ってわいたような金銭疑惑問題に関する質問に答える時間が多く、「かえって国際的にアベノミクスの印象を悪くした」(国内市場関係者)との声も聞かれる。

先の外資系証券の関係者は「アベノミクスの推進力が、甘利氏の辞任によって弱まることになるだろう」と述べ、海外勢による日本株売り/円買いにつながりかねないと予想している。

「政策推進力」について、実際にアベノミクスの具体的な政策企画や法案作成に関わってきた政府関係者が指摘しているのが、「金のかかる政策」が目白押しの「一億総活躍社会の実現」の財源問題だ。

甘利氏は、安倍内閣の新しい一枚看板であるこの政策を財政面から支援する仕組みを作り上げることに閣内で尽力していた。

子育て支援や介護離職ゼロといった社会保障関係の政策にかかる追加的な歳出増の具体的な財源は、まだ確保されていない。甘利氏は22日の経済演説で、その財源にアベノミクスの果実を充てる方針を盛り込んだ。

政府関係者の1人は「アベノミクス3年間での税収増の一部を税収の土台の厚みに加え、これから先も補正ではなく本予算に充てることで、新しい政策の財源にしようという考えの急先鋒が甘利氏だ」と述べる。

経済財政諮問会議でも「甘利ペーパー」を提出し、今年6月の骨太方針に税収増の一定程度を「一億総活躍」や成長のための歳出に回す方針を盛り込むことを打ち出した。

甘利氏は、その点に関連し「政府として明確な方針を策定」すると明言。財政再建を優先する財務省に対し、一定のルールの下に税収を歳出増に使うなら、野放図な使い方にはならないと説得しようとしていた。

昨年の骨太方針取りまとめの際も、歳出の目安をめぐって社会保障費の抑制額を年度ごとに0.5兆円と明記するよう求めた財務省に対し、甘利氏は3年間の目安にするよう要求。数値目標の明記を食い止めたと言われている。

複数の政府関係者は甘利氏の存在について、新3本の矢の財源問題に関する「突破のけん引役」と述べている。このため政府部内には、甘利氏の辞任が消費増税対策や格差是正・経済底上げを実現するための新たな対応策の作成においてマイナスに働くとの声が広がっている。中には「成長重視のアベノミクスにとって、相当な痛手になることは間違いない」と述べる政府関係者もいる。

というのも、税収増を新たな政策に活用しようという甘利氏の考え方には、根強い反対論も存在する。財務省高官の1人は、甘利氏らの主張が「税収と歳出の差が開くワニの口をどんどん大きくしている」と批判。「税収増を歳出増に充てるとしても、せいぜい1割が上限だ。あとは国債減額に使うのが筋」だと主張する。

政府内における税収活用派と財政再建派のバランスが、甘利氏の辞任によって財政再建派の方へ傾くのかどうか。霞が関の官僚は、今後の政権内の勢力図の変化に耳目をそば立てている。

 

(中川泉 編集:田巻一彦)

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