アイドル「恋愛禁止」問題、法的論点はどこに ファンと交際で「真逆の判決」が出た意味

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神尾弁護士には、昨年9月の判決のときも解説してもらい、次のような記事にした。

「ファンと交際」アイドルに賠償命令ーー交際禁止は「公序良俗違反」で無効でないか?

それを踏まえ、どのように考えているのだろうか。

「判決文や契約書の内容などがわからないので、一般論としてお答えします。昨年9月の認容判決の際にコメントしたように、ファンとの交際を禁止する契約は公序良俗違反の疑いがあり、特殊な事情がある場合に限り、有効(損害賠償等が認められる)と考えます。

恋愛の自由は、個人の根幹的な自由であり、それを制限するには相応の理由がなければならない、という理由です」

微妙な事情や裁判官の価値観が判断をわけた可能性

前回の事件と今回の事件とで、何が結論を分けたのか。

「正直に申し上げると、報道ベースでは、その細かいところは伝わってきません。おそらく、次のような事情などが考えられます。

(1)前回の事件では、グループが解散にまで至っており、プロダクション会社のマネジメントへの影響が非常に大きかったと考えられること

(2)前回の事件では、契約時も交際時も未成年であり、教育的な観点からも恋愛禁止としやすかったこと(校則などで恋愛を制限できることに似ています)

ただ、(2)については、『成人だからこそ自分の行動に責任を取るべき』とも考えられます。判断を分けたのは本当に微妙な事情だった可能性もあり、裁判官の持つ価値観の違いによる可能性もあります。このままでは、アイドル側(特にこれからアイドルになろうとする人)もマネジメント会社側も予測ができず、どのような契約を結んだらよいのか不安定な状態になります。

前回の事件の際にもコメントさせていただきましたが、恋愛禁止は強い制限ですし、個人と会社では力関係も不均衡といえます。業界内でガイドラインを作るなど、公平でわかりやすいルール作りが重要になろうと考えます」

神尾弁護士はこのように話していた。

神尾 尊礼(かみお・たかひろ)弁護士
東京大学法学部・法科大学院卒。2007年弁護士登録。埼玉弁護士会。刑事事件から家事事件、一般民事事件や企業法務まで幅広く担当し、「何かあったら何でもとりあえず相談できる」事務所を目指している。
事務所名:彩の街法律事務所

 

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