アメリカは巨人、日本はソフトバンク--プロ野球を通して考える国際政治《若手記者・スタンフォード留学記 35》

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 チーム戦略としても、大砲、ホームランバッターばかりを並べた布陣から、坂本、亀井など機動力を生かしたバランスの良い体制に変わりつつあります(アメリカも、大砲=軍事力任せの強引なやり方から、外交、ソフトパワーを重視した戦略へ変わろうとしています)。

スターぞろいで競争が激しく、ファンの目も厳しいため、ダメな選手はすぐ淘汰されます。生え抜き選手の比率が低く、FA(フリーエージェント)を多用して、他チームのエースを引き抜くのが得意です(アメリカも、国籍にこだわらず、各国の俊英を移民として取り込んでいくのがうまい)。また、親会社に日本で部数トップの新聞社を持つため、世論にインパクトを与える力が強い(アメリカも世界の主要メディアを牛耳っています)。

2) 西武=EU--多士済々。往年の強さが戻りつつある

リーグ優勝21回、日本一13回を数える名門。財政力や人気、派手さでは巨人に劣りますが、昨年の日本シリーズで巨人を破ったように、チーム力や勝者のメンタリティーでは、巨人に全く劣りません(EUも、総合的な経済力、軍事力ではアメリカに劣るものの、その独自の戦略・価値観・知性により、アメリカにはない魅力をたたえています。アメリカに対して、コンプレックスは抱いておらず、むしろ、アメリカをバカにしている部分も強い)。

一時、清原、秋山らを擁した黄金期の存在感が失われていましたが、最近、また王者の風格がよみがえって来ています。パワーの中村、俊足の片岡、強肩のGG佐藤など、選手の個性が際立っています(EUも、多数の国家の連合体であり、個性が豊かです)。

加えて、中島、片岡、涌井、岸を筆頭にイケメンぞろいで、ファッションセンスは球界ナンバーワンでしょう(EUも、ファッションや芸術の面では、世界をリードしている)。

3) ソフトバンク=日本--高齢化が進み、過渡期にある。ただ、潜在力はある

1998年以来、Aクラスを維持し、優勝争いの常連となってきましたが、昨年はリーグ最下位に沈むなど、元気がありません。観客動員も落ち込んでいます。

松中、小久保など主力選手の高齢化が進む一方、次代を担うべき斉藤、多村らの選手がケガがちでピリッとしません(日本も、経済が停滞を続け、高齢化のスピードが速く、次代を担う世代もまだ台頭してきていません)。

親会社が、オールドエコノミーの象徴たるダイエーから、ソフトバンクに変わり、一部大胆な改革が進められましたが、その結果が現れていません(日本も、小泉首相の登場により、希望が生まれ、大きく変わるかに見えましたが、その後、改革が停滞しています。古い製造業から、IT・金融への転換もうまく進んでいません。親会社のソフトバンクは、売上高も大きいですが、借金もバカでかい(日本も、経済規模はでかいが、借金もバカでかい)。

昨年まで監督を務めた王監督は、巨人の英雄であり、巨人とのゆかりは深い。ソフトバンクの孫社長もアメリカの大学を出ており、その経営は、アメリカの影響を大きく受けています(日本も、アメリカとの付き合いが深く、アメリカの影響力は大きい)。

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