iPhoneの成長、本当に止まってしまったのか アップル最新決算にみえる懸念と希望

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2015年初頭は、「大画面化の解禁」「中国市場参入の本格化」という2つのバズーカによって、「出来過ぎだった」と振り返ることもできる。ただし、バズーカの効果が長続きするわけではない。

大画面化後のセカンドモデルでインパクトが半減したiPhone 6s/6s Plusや、新市場強化による積み上げ効果の減少は、2016年第1四半期決算のゼロ成長という結果と、次の四半期のマイナス成長という予測につながっている。将来的には、「あのとき稼げるときに最大限稼いだ」と振り返ることもできるかもしれない。

4インチサイズを投入か?

また、4インチサイズのiPhone投入への「伏線」もしくは「動機」として注目できるコメントあった。

それは「インストールベースで60%のデバイスは、依然として4.7インチ、5.5インチといった大きな画面のiPhoneにアップグレードされていない」というものだ。既にiPhone 6/6 Plus、iPhone 6s/6s Plusといった大画面デバイスを使っているユーザーは、まだ全体の40%に留まっている、ということだ。

この6割の人々は、今後大画面のiPhoneに乗り換える可能性があることを示唆している。同時に、米国で2割ともいわれる「小さな画面のiPhone」を好む人々に対して、噂が高まっている4インチの小型iPhoneの新モデルが、iPhone販売にプラスの効果をもたらす可能性を示唆するものだ。

iPhoneの成長停止と減少予測は、一本調子で成長してきた「アップルの一つの時代の終焉」を指摘するには十分なデータだ。同時に、スマートフォンは、世界経済の動向に大きく左右されるほどに重要な存在になっていることを表している。

2016年第1四半期決算で減少に転じたMac、引き続き大幅減のiPadも、同カテゴリの「スランプ」のなかでは善戦している製品だ。期待が大きいだけに失望も大きくなりがちなアップルの動向について、世界全体の経済とも照らし合わせながら、冷静に注目していくべきだろう。
 

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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