企業の変革支援がIBMの成長軸だ 橋本孝之・日本IBM社長に聞く

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企業の変革支援がIBMの成長軸だ--橋本孝之・日本IBM社長

社長就任後3カ月で、「クライアント・ファースト(顧客優先)」を実践した約900人の社員を表彰した。橋本社長は入社後10年にわたり東海地区での中堅・中小企業向け営業を担当、新規顧客開拓で実績を上げた。大手企業だけでなく、中堅以下の企業を知るのが橋本社長の強み。「厳しい環境の時こそ顧客訪問が重要」と説く。

--深刻な経営環境の悪化を受け、大企業はこぞって設備投資の削減を進めている。逆風化での社長就任となりました。

非常にシビアです。しかし、すべてのIT投資が止まったわけではない。私は、IT投資には三つの種類があると考えています。一つが「設備更新型投資」。たとえばサーバーを定期的に新製品に取り替える、というようなもの。これは不要不急ですから、今のような局面では全面的に先送りされる。

二つ目が「義務的投資」で、セキュリティ強化、国際会計基準対応などの投資。これは今でも堅調だが、大きく増えもしない。三つ目が、トンネルを抜けるための「企業変革投資」。いま私たちが訴えているのは、この三つ目をやりましょう、ということです。

企業変革投資も、短期と長期の二つに分けられる。今の時期になかなか長期的投資を始めるのは難しいため、まずは6カ月程度で効果の見えるコスト削減策を提案する。典型的なのが、データセンターの統合、拠点の集約化です。これを「緊急オファリング」と称しているが、2月に提供を開始して以降、すでに二十数件の契約があった。

今のような厳しい時期に、コストをしっかり下げる。そして、この時期を乗り越え、そのコストが下がった分を企業変革のための長期的投資に向けるよう提案している。

--しかし、景気の底が見えない環境では、企業もなかなか追加のIT支出を決断できないのでは。

ブレーキは強烈です。今までと同じような営業のやり方は通用しない。たとえば「期末だから安くします。ぜひ早めに買ってください」なんて言っても、もうほとんどダメ。お客様から見て価値がある提案でなければ、決済してもらえない。

しかし、こういう時こそ営業はお客様のところに足繁く訪問をして、課題や悩みに耳を傾ける必要がある。社長就任後の3カ月のスケジュールを秘書が計算したところ、私自身は勤務時間の53%をお客様訪問に費やしていた。目標は6割です。他の役員や現場の営業にも、お客様訪問を優先してほしい。「クライアント・ファースト」を実践した社員への表彰制度も開始し、最初の3カ月で約900人、6%の社員が対象になった。4月中に目安箱のようなものを設け、現場の声が直接、私のところに届く仕組みも始める。

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