省エネ家電で失態、日立子会社が不当表示

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省エネ家電で失態、日立子会社が不当表示

日立グループの日立アプライアンスが4月20日、公正取引委員会(公取)から、景品表示法違反で排除命令を受けた。

同社は冷蔵庫の主要9機種について、製品カタログなどに、真空断熱材に業界で初めてリサイクル樹脂を活用し、断熱材製造工程のCO2排出量を約48%削減などと記載した。だが実際は、そうしたリサイクル材はほとんど使われておらず、CO2の削減量も表示を下回っていた。公取の担当者は、「エコを売り物にしながら、そのエコにまつわる不当表示をしたことは問題が大きい」と指摘する。

原因は情報共有の不備

「まさか日立の冷蔵庫で……」と家電量販店の店員が驚くように、売れ筋の大型冷蔵庫で日立はトップシェアを誇る。消費電力を節約できる省エネ機能にも定評があり、2008年度には経済産業省が主催する省エネ大賞を受賞した。だが、賞の応募時に今回問題となったリサイクル材使用によるCO2削減効果も説明しており、公取からの排除命令を受けて、即日受賞を返上した。

不当表示について日立アプライアンスは「社内の連携ミスが原因」と説明する。

同社では製品の開発・設計を手掛ける部署が栃木事業所にある一方、企画・宣伝部門を東京本社に置いている。リサイクル材の使用について、開発・設計部門が当初予定していたものの、その後、技術的な理由から実現が難しくなったことが本社に伝わっていなかった。つまり、情報共有の不備によってカタログや広告での不当な表示が起きたというのだから、あまりにお粗末だ。

環境事業に詳しい日本総合研究所の三木優主任研究員は、背景に「省エネ機能の競争激化がある」と見る。

消費者の節約志向の高まりや、政府によるエネルギー消費効率の基準導入などで、各メーカーは有用な「売り文句」となる省エネ機能向上に、しのぎを削っている。「家電メーカーの省エネ技術は高度化し、各社ほぼ横並びになっている。そこで差別化を図るため、リサイクル材利用によるCO2排出量の削減効果を訴えようとしたのでは」(三木氏)。日立が表示した断熱材の製造工程での「約48%」というCO2排出量の削減率も、4年前の工程との比較。「本来なら直近の製品と比較すべき。表示の意識が甘い」と公取も指摘する。

排除命令が出された翌日、政府は追加経済対策の一環として、5月15日以降に購入する省エネ家電に「エコポイント」を付加すると発表した。消費者にいかに正しく製品の魅力を伝えるか。今回の排除命令は、メーカー側への警鐘の一つといえそうだ。

(許斐健太、野津 滋 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

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