静岡鉄道の新型電車が「虹色」になったワケ 富士山やイチゴ、ミカン…「ご当地の7色」

拡大
縮小

新型車両の導入が発表されたのは2014年の秋。地方の鉄道は大手私鉄やJRの中古車両を改造して使用する例が多い中、A3000形は同鉄道オリジナルデザインの新車であることから、地元のみならず全国の鉄道ファンの注目を集めた。

新静岡駅の待合室に展示された新型車両の模型。7編成がそろうと「虹」になる

だが、実はこの時点では「虹の7色」のカラーリングはまだ決まっていなかった。「カラーリングについてはかなり迷って、車両メーカーに怒られるくらいたくさんの案をつくってしまった」と笑うのは、同社鉄道部安全推進課の吉林史仁副課長だ。

現在走っている1000形電車はステンレス製で、広告などをラッピングした車両も多いものの、基本的には銀色のステンレスの質感を生かしたデザインだ。A3000形も車体はステンレス製で、静鉄は通勤・通学需要が多い路線でもあり、そのままシンプルな銀色という選択肢もあった。だが「今後人口が減っていく中で、観光需要も取り込んでいくことを考えると、何かできないかと」(吉林さん)。そこで生まれたのが、地域と結びついたカラー展開だ。

「次々出てくるのが楽しい」仕掛け

同社では、新車の導入にあたって若手社員による検討チームを結成。現在のメンバーは7人で、吉林さんがリーダーを務める。「鉄道というと男性の色が強い」(吉林さん)ため、新たな意見を取り入れるためにメンバーの男女比はほぼ半々。鉄道部だけでなく、社内の各部門から集まったメンバーが、カラーリングをはじめとする外観や内装など、各部のデザインについてアイディアを出し合い検討を進めた。

カラーデザインを考えるうえでポイントとなったのは、新車の導入が8年計画と長期に渡ることだ。「同じものが12本出てくるのだと、最初は盛り上がったとしても次第にしぼんでしまう。次々と出てくるのが楽しみになるような仕掛けにしたかった」と吉林さんは語る。

さらに、2019年には同社が創立100周年を迎える。新車の導入スケジュールでは、同年度に7本目と8本目が登場する予定だ。節目の年に7本がそろうという点を生かせないか……という考えから「7色」のアイディアが生まれたという。

次ページ地域の「一番」をテーマに
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT