台湾学生運動リーダーが案ずる新政権の進路 結局は国民党のようになってしまう可能性も

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――第3勢力の核となった時代力量と緑党社会民主党連盟は、もともと同じ団体でした。なぜ分裂したのでしょうか

当初、両者は「公民組合」を結成し、それから分裂して政党を設立することになった。選挙対策の点で双方の意見が食い違った。それは、民進党とどのような戦略的関係・協力を行うか、という問題だった。時代力量の戦略は、地方区選挙では民進党と交渉したり世論調査の結果によって自党の候補者を出馬させるという方針だった。若干の混乱は生じるといえども、時代力量と民進党を支持する基礎組織はともに協力していた。

緑党社会民主党連盟は、民進党との協力はしなくてもいいと強く主張していた。とはいえ、選挙戦後半の動きをよく見てみると、社会民主党の范雲主席は自ら出馬した選挙区などで民進党の蔡英文氏のイベントに出席したり、民進党の院内代表とも会うなど、蔡英文支持を直接訴えていた。時代力量と緑党社会民主党連盟の違いは、投票日に近づけば近づくほど目立たなくなっていた。

労組を大量動員した選挙戦に驚き

一方、比例代表の政党票で見ると状況は変わってくる。緑党社会民主党連盟のうち、緑党は比較的自主性を維持し、他の政党と協力せず、また誰とでも交渉して協力することにやぶさかではない。彼らの選挙戦略は、すべてマイペースだった。

また、緑党の比例代表名簿1位だった張麗芬候補は、今回の選挙で多くの労働組合員を動員した。労組を大規模に動員することは、台湾の政治では非常に珍しい。議席は得られなかったが、労組を動員して選挙戦を戦うという流れが次の選挙にまで維持されれば、地方選挙などにも影響を与える可能性がある。

――時代力量に対して、「民進党の翼賛政党」という指摘が少なくありません。この指摘についてはどう見ますか。

今回の選挙期間中での双方のやりとりなどを見ていると、「そんな指摘は的外れだ」と単純に言うことはできない。前にも触れたが、民進党と今後どのような距離を置くのかが、時代力量が今後直面する課題だ。国土開発や経済・貿易政策、TPPといった市民社会と政権と対立が生じやすい問題など、時代力量はどう処理していくのか。民進党とは決別して自らの道を進んでいくのか、そしてそんな態度が多くの支持を得られるものなのか。時代力量は民進党との差別化を図るのかどうか、今後じっくりと観察すべきことだろう。

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