上野千鶴子さん、なぜ「女」は辛いのですか? 20~30代が知らない、日本の「女の歴史」

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――フェミニズムは解毒の役に立つのですか。

ものすごく役に立つわよ。私も、自分が生きていくのにとても役に立ったもの。だからこそ、若い世代にフェミニズムを知ってほしい、受け継いでほしいと思います。

フェミニズムを知ると、生きづらくなる、という人もいます。たしかに多くの場合、問題の根深さ、構造を知ると、簡単には解決できないとわかるから、短期的にはつらくなるでしょう。それでも、長期的には、フェミニズムはあなたをラクにしてくれるはずよ。

そうだったのか! と、問題の本質を知ることで、知的快感を覚える人もいますが、それだけではありません。自分が感じている、もやもやした感覚、これはおかしいんじゃないか、という言語化できない感覚に、言葉が与えられて、社会とつながっていくから。

権利は天からは降ってこない

――具体的に、どうすればいいでしょうか。

女性が、声を上げて言い続ける必要があるわね。さっき、夫に家事を要求すべし、とお話しましたが、女性は、身近な男性だけでなく、会社と社会にも要求するべきです。だって、今の働く女性がお茶くみをしなくて済むのはなぜか、考えてみたこと、ありますか? 誰か上の世代の女性が、お茶くみはしたくない、と言ったからです。

特に働く女性に言いたいのは、あなたが今、お茶くみをしなくて済む環境は、あなた以前の女性たちが作ってくれたもの。権利は天から降ってくるものではないんです。だからあなたには、今のあなたが少しでもラクになるように、要求して声を上げてほしい。自分は何もせずに人が作ってくれた環境に甘んじていてはダメ。それではフリーライダー(ただ乗りする人)になってしまうから。

■上野語録4:権利は天から降ってこない
あなたたち、みんな忘れているのが、労働基準法だって雇用均等法だって、天から降ってきたわけではないってこと。みんな、裁判などで闘争して勝ち取ってきたのよ。

 (撮影:今井康一)

※この記事の後編は2月4日(木)に公開予定です

治部 れんげ ジャーナリスト

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じぶ れんげ / Renge Jibu

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社、ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで! 「女らしさ」「男らしさ」』1~3巻(汐文社)等。

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