海外で大絶賛される「阿波踊り集団」の正体 ニューヨークやパリ市民を踊らせた「寳船」

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――伝統芸能の本質的なハードルはどこにあるのか。

日本人にとっても伝統芸能は、歴史があるがゆえに、どこか「触れてはいけもの」のような距離感があると思います。でも、実は歌舞伎も昔はエンターテイメントでした。歴史には敬意を払うべきだけれど、大事にしすぎて本質がわからなくなってしまってはもったいない。伝統芸能こそもっと、日本人自身が楽しんでいいものだと思っています。

キーワードは「触れる」と「和える」

――では、伝統芸能にどう触れて楽しめばいいのか。

「和」という字は、「和む(なごむ)」「和える(あえる)」と読みます。芸能もミックスして、融合して、「和える」。単にAとBを足すのではなく、クリエイティブに生み出す力が大事。海外の日本のエンタテインメントは、長唄とポップスが混ざっていたり、和に「+α」したものが多いです。そういうものが、日本を新しい文化を作っていくし、日本人が得意なんだと思っています。

――阿波踊りの中では寳船は「異分子」ともいえる。

新しいことにチャレンジするときに抵抗があるのは当たり前。先達に納得してもらうには、自分たちが何のためにやっているのか、目的がぶれないようにしないといけない。阿波踊りを踊る先に何があるのか、考えた末のわたしたちの理念は「世代や国を超えて感動を伝える」ということ。踊りはそのための手段。そんな風に、寶船の理念をつきつめて考えておくようにしています。それから、情報発信には気を使っています。ロジカルに考えて筋道立てて説明できるよう準備しています。若者の思いつきで、ぶっ壊すみたいに思われたくはないので。

――寶船が大事にする、阿波踊りの本質は?

阿波踊りの中には、手や足の動かし方の形をつきつめるやり方もありますが、それだと下手な人は踊れなくなってしまいます。それよりも、寶船は踊ることを楽しむ気持ちの方が大事だと思ってます。たとえば、よちよち歩きの子どもが法被を着て踊っていれば、見るものの心を一瞬でつかんでしまいます。何十年も踊っているベテランでさえも、瞬時にこえてしまうほど魅了する力があって、そういうことの方が手や足の形よりも大事だと考えています。

――変化させるものと、変化させないものは?

阿波踊りは大衆芸能で、時代によって踊り方が全然違います。今、踊っている阿波踊りは現代のスタイルであって、大正・昭和はジャズの流行に影響を受けてカンカン帽や管楽器を使ったりもしました。江戸時代にさかのぼると歌舞伎の模倣だったりする。一方で、昔から身分も性別も関係なく、子どもから大人まで一緒にたのしむのが阿波踊り。そこを拡大解釈すれば、国も時代も超えて楽しむものなんだ、という寶船の理念につながってきます。

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