大西卓哉・宇宙飛行士候補/元全日本空輸(ANA)パイロット--人類進歩の原動力は好奇心、日本独力で有人宇宙飛行を

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--学生の理系離れが危惧されていますが、どう見ていますか。

学生時代に映画『アポロ13』を見て感動したのは、ロケットが発射されるときの映像自体にすごい迫力があった場面です。映画の中では打ち上げを見た家族とか、みんながものすごく感動して、泣いたりしているんですよね。そういう姿を見て、「人の心を動かせる科学技術ってすごい」と、思ったんですよ。

ただ、今の子供たちは、理系の将来に対してあまりいいイメージがないのかな……。ちょっと表現するのは難しいけど、ある意味、金融業界とかおカネをたくさん稼げる仕事が目指すべき未来になっているのですかね。そういう仕事が注目を浴びていて、片や、一生懸命に一つの分野に特化して研究を続けている研究者は薄給。ノーベル賞を受賞して初めて脚光を浴びたりするような世界なんです。僕は宇宙開発を通じて、理系の世界も面白い、夢がある世界だぞ、というのをぜひ伝えていきたい。

--宇宙飛行士という職業を通じ、メッセージを発信するのですね。

人類の進歩の原動力は、好奇心でありパイオニア精神です。それが、特にこれから生かされる分野が宇宙開発だと思います。これから先、宇宙にどんどん人類が進出する時代が来るはずです。これからの何十年間は、その時代の先駆けとして非常に重要になります。自分たちがその礎になって、次の世代の将来につなげたいですね。

--宇宙飛行士候補になって、今の夢は何でしょうか。

まずは月に行ってみたいですね。それから日本の宇宙開発に期待したい夢としては、日本独自の技術で有人宇宙ロケットを造り、日本人を宇宙空間に送り出すことです。この間、中国が実現しました。日本人も日本の独力で宇宙に乗り出せれば、非常にすばらしいですね。
 
(聞き手:冨岡 耕 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済)

おおにし・たくや
1975年東京都生まれ。98年東大航空宇宙工学科卒業、全日本空輸入社。今年2月、宇宙飛行士候補選抜試験に合格。4月から宇宙航空研究開発機構(JAXA)職員。米航空宇宙局(NASA)などで約2年の訓練後、宇宙飛行士に認定。

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