実は女性が着物に家紋を入れるのはおかしい

関東には伝わらなかった「女紋」とは何か

和服における「女紋」は、なぜ関東に拡がらなかったのか(写真:KAORU / PIXTA)
父親の代から京都で高級呉服を商い、2001年に銀座にアンテナショップ「銀座きものギャラリー泰三」を開店した高橋泰三氏。皇室に着物を献上し、歌舞伎の衣裳も手掛けたことがある高橋氏に、着物にまつわる日本文化の奥義を聞く。シリーズ3回目は女紋について。
第1回:日本政府の紋「五七の桐」を知っていますか
第2回:宮中の着物には、日本の歴史が息づいている

 

1983年に映画化された谷崎潤一郎原作の「細雪」は、大阪・船場の大店・蒔岡家に生まれた4姉妹が、近代から現代にうつろう時代に生きぬく様子を描いている。

市川崑監督の名作『細雪』はDVDでも販売されている(上の写真をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

オープニングは京都・嵐山での花見のシーンだ。その息をのむような映像の美しさに、ヘンデルの「オンブラ・マイ・フ」の調べがゆったりとした時の流れを感じさせる。

加えて印象深いのが父親の法要を済ませた後に4姉妹と2人の婿たち、そして「富永の叔母さん」が集うシーンだろう。本家の座敷の上座に「富永の叔母さん」が座ると、さっそく姪たちに、亡兄にもっともよく仕えた使用人の焼香の順番が後になっていたこと、御斉(法要後の会食)を一流の料亭で行わず、お寺の庫裏で仕出しですませたことについてお小言を述べる。

それを聞かされる長女の鶴子(岸恵子)が着用しているのは黒喪服で、次女の幸子(佐久間良子)は紫、三女の雪子(吉永小百合)はからくれない、四女の妙子(古手川祐子)はピンクの色無地だ。いずれも背と胸と両外袖の5箇所に、「上り藤」の紋が染め抜かれた格調高いもの。袖がやや長めなのが時代を感じさせて興味深い。

関西では女性の権利意識が強かった

一方で、三宅邦子が演じる「富永の叔母さん」の黒喪服の紋は「蔦」だ。「蔦や藤は繁殖力が強いので一族繁栄に繋がるとされ、女紋によく使われます」。こう話すのは高橋泰三氏。「女紋というのは、家紋(正紋)とは別に女性が付ける紋のことです。関西では母系紋を意味し、母から娘へ、そして孫娘へというふうに伝わってきました」。

女紋は喪服のほか、留袖や色留袖、婚礼箪笥や鏡台などにも付けられる。「いわば、持ち物に名前を書き入れるのと同じですね。関西では女性の権利意識が強く、夫といえども妻の財産については、勝手に処分はできなかったとされています」。

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