大混迷政治の序曲を告げる「桜の季節」の一瞬の晴れ間

大混迷政治の序曲を告げる「桜の季節」の一瞬の晴れ間

塩田潮

 秋に政権を握り、直後の支持率は50%前後でまずまずだったが、すぐに低空飛行となり、翌年春に20%台まで落ち込んだ。「スタートから政権末期の様相」と酷評されたが、予算成立の4月に政権も上向きとなる。そこまでの大逆風の半年を振り返り、「気がついたらいつの間にか桜も終わっていたね」とつぶやいたのは、1992年の宮沢首相である。
 ここまで、麻生現首相は17年前の宮沢首相とそっくりだ。4月18日、桜を引き合いに、新宿御苑での会で「冬の時代に仕込んできたのが花開いた」と述べた。3月28日、高知市での学生主催イベントで質問に答えて、「首相の条件は何よりもどす黒いまでの孤独に耐え得る体力と精神力」と説いたという。「どす黒いまでの孤独」を余儀なくされながら長い厳寒の冬をくぐり抜けてきたという思いが込み上げてきたのだろう。

 92年の宮沢首相は、立ち直って夏の参院選で善戦し、自信を深めた。ところが、「秋に永田町に大型の台風が吹くぞ」と現民主党代表の小沢氏が予言した。的中し、金丸事件という大型台風が襲う。政界再編の嵐が見舞った。93年夏に内閣不信任案が可決し、自民党からの集団離党、総選挙敗北、宮沢退陣、非自民政権樹立と続く。空前の激動となった。
 17年後、麻生首相は同じ運命をたどるのか。敵失のいまも、今夏の沈没の可能性が高いと見るが、仮に総選挙に辛勝して続投を果たしたとしても、次に大型台風の襲来、政界再編の嵐、来夏の参院選前後に政界激動という展開になるだろう。

 次期総選挙は大政変劇のフィナーレではなく、開演のベルである。麻生首相には孤独に耐える力はあっても、宮沢氏と同様、新しい政治を生み出すパワーの持ち合わせがなく、時代に吹き飛ばされそうだ。
 そういえば、17年前もバブル崩壊直後で、日本経済は土砂降りの雨だった。「桜の季節」の一瞬の晴れ間は、向こう1年に及ぶ大混迷政治の序曲である。
(写真:尾形文繁)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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