台湾は中国とどう付き合っていくのか 理想と現実の間には大きなギャップ

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同時に、大陸からじわじわと広がる中国の影に、台湾は不安を募らせてきた。台湾企業の大陸進出は増えたものの、力をつけた中国企業が台湾企業のライバルになった。2008年に解禁された中国人観光客の受け入れによって、中国人が台湾を闊歩するようになったことも、中国脅威論の広がりに拍車をかけた。

高まる対中依存への不安が最高潮に達したのが、2014年3月の反政府運動「ひまわり学生運動」である。中国依存を深めても就職先は減り、賃金は上がらず、チャイナマネーの不動産投機で家も買えない。若者の間では不満が、くすぶっていた。ECFAの一部であり、サービス業での市場開放を狙った「サービス貿易協定」の批准をめぐって、不満は一気に噴出。現政権への反発が投票日まで続き、政権交代の原動力となった。

経済政策に特色なし

このような民意の後押しを受けた蔡氏は、中国とどう付き合うのか。彼女は選挙戦では「現状維持」のみを訴えた。当選後も「現状維持は私が台湾の人々に対して行った約束で、国際社会に対する約束でもあり、言った以上は必ず守る」と言明しただけだ。

この発言は「中台の現状や既存の関係を阻害するような状況を作らないということ」(みずほ総合研究所中国室の伊藤信悟室長)。前政権の対中政策を尊重し、極端に崩すようなことはしない現実路線を歩む可能性が高い。

蔡氏が打ち出した経済政策の主軸は、イノベーションを通じた成長を狙う先進国型経済への転換だ。「5大イノベーション研究開発計画」など産業育成策を打ち出し、TPP(環太平洋経済連携協定)など自由貿易圏に参加して対外経済も強化する。しかし、これは馬政権時代の政策と、大きく違わない。

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