LNGロケットの七転八倒、衛星「標準化」の賭け

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 宇宙空間用のLNGエンジンで世界の先頭に立った自負もあるのだろう。JAXAが見据える「次」は、有人宇宙飛行だ。「夏に打ち上げるHTV(無人補給機)も、基本的には有人仕様になっている。(有人飛行を)やれ、と言われたら、最短距離でやれる蓄積を考えている」。

波長の違いは、ある意味当然だが、官主導の基本法の下、新たな拡散が始まりつつある気配である。

“先生”に勝った部品と標準化

H2Aの民営化を託された三菱重工。一度は民間主導に賭けたIHI。ともに今は、官にすがり、夢(有人飛行)も官頼み。宇宙産業は、「官一辺倒」でしかありえないのか。

昨年末、シンガポールの衛星を受注した三菱電機が、“そうではない”道を指し示している。

日本の衛星は圧倒的な劣勢にある。日本の通信衛星・放送衛星でさえ、20機のうち日本製はただの1機だけ。だが、シンガポールの勝利は運のおかげではない。

今回、シンガポールでの受注は事実上、米国ロラールとの一騎打ちだった。ロラールはその昔、三菱電機が技術導入した先生である。「ラクな価格ではない。が、赤字受注はありえない」(三菱電機宇宙システム事業部・稲畑廣行事業部長)。

「よくやった。ありがとう」。OBたちは畳に頭をこすりつけたという。苦節十数年の雪辱である。日本の衛星は89年、一度“殺された”。日米経済摩擦のさなか、米国がスーパー301条を発動し、日本政府の実用衛星はすべて国際入札となったのだ。よちよち歩きが、いきなり大人と相撲を取れ、と言われたのだから、ひとたまりもない。

三菱電機はまさにそのとき、あらためて商用衛星への進出を決意した。まず、コンポーネンツから。海外の衛星メーカーに売り込んだが、初めはけんもほろろ。「が、いったん認定されると、品質のよさが理解される。太陽電池パネルの溝も、日本は筆で一つひとつ埋めていく。そんなきめ細かさは海外にない」。気がつけば、太陽電池パネル、リチウムイオンバッテリー、ヒートパイプパネルの世界シェアが40%に達していた。

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