新興デベロッパーになお続く「重大局面」、金融機関の支援継続の正念場《不動産危機》

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 「最近、危ない会社の頭文字をとって“JAPAN”なんて言われている」。不動産会社の資金繰り難が続く中、ある業界関係者はそう苦笑する。頭文字をとった「JAPAN」は昨年来言われているが、該当企業の倒産もあり、新たに入れ替わって登場した。そんな言葉遊びがまかり通るほど不動産業界の経営危機説は日常化している。

株式市場で不動産セクターを調べると、3月末現在、全部で130社あるが、このうち2000年以降の公開企業は全部で82社。実に63%に上る。ところが、昨年1月以降わずか1年の間に19社が“倒産”しているが、いずれも00年以降に上場した企業だ。ある業界関係者は、現在のような資金繰り難が続くと「J‐REITが解禁された00年以降に上場した企業全部に倒産懸念が出てもおかしくない」とまで言う。

資金繰り難はここまできた。年明け以降、住宅金融支援機構の「まちづくり」融資資金に突然、中小のマンションデベロッパーが殺到しだしたのだ。担当者は、「この制度は平成19(07)年からあるが、年間10件程度の実績だった。が、昨年12月に不動産業者に対する緊急支援策を追加公表したところ、土日まで問い合わせが続いた。具体化された融資案件は3カ月で40件に及んでいる」(元木周二・まちづくり推進部まちづくり業務グループ長)と言う。

資金繰りの綱渡り経営 突如、アゼルも破産

それだけではない。3月25日にはクレディセゾン系の不動産デベロッパー、アトリウムが保証債務等の引当金繰り入れで債務超過が確定的になり、クレディセゾンの完全子会社化=上場廃止を決定した。IR担当者は「昨年のリーマンショック以降、手掛ける不動産融資保証で、資金繰り難に陥った不動産会社の代位弁済が急増した結果だ」と言う。

こうした厳しい資金繰りに多くの新興デベロッパーの経営も直撃されている。下表は3月25日時点で株式を公開している新興デベロッパーの経営安定度を四つの項目で見たものだ。自己資本比率、当座比率の両方が20%未満(オレンジ色表示、10%未満は濃い色表示)で、監査法人による継続性の疑義も付いている企業は全部で9社。これを売上高の規模で順位づけすると、プロパストアトリウム、アゼル、アルデプロサンシティ日本商業開発アスコット陽光都市開発セイクレストとなる。


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