日本の「食のおもてなし」、実は"超一方的"だ ベジタリアンは日本での食事に困っている

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それからうん十年。その当時から日本の状況もかなり変わっているのではないか、と思う人もいるでしょう。私の米国人のパートナーや友人はベジタリアンが多いのですが、彼らとともに日本を訪れたときも、「美食の国日本で世界一美味しいベジタリアン料理が食べられる!」と全員が胸を膨らませていました。

それなのにやってきてビックリ! 驚くほどベジタリアン向けのレストランや料理が少ないのです。「え?豆腐のお味噌汁や、野菜ばっかりのお鍋なら大丈夫なんじゃないの?」と思うかも知れません。しかし、厳格なベジタリアンにとって、肉や魚の出しはタブー。サラダのドレッシングですら「動物性脂肪」が入っていることが少なくありません。「取り除いて調理して欲しい」と頼んでも、ほとんどのレストランがそんな対応はしてくれない。そのため、レストランでそういうお願いをするのも躊躇するようになってしまいました。

東京でさえそのレベルですから、地方は推して知るべし。地方のホテルや旅館で出される夕食はほぼアウトですし、朝のバイキングですら食べられるものはほとんどない。せっかく地方に旅行にいっても、コンビニのおにぎりばかり食べていた、という笑えない話を聞くこともしばしばあります。

一方的に料理を出すのが「おもてなし」?

せっかく日本に来たのに、ベジタリアンだと言うだけでいちばん楽しみだった食事で苦労するのが今の日本の現実。味覚に優れていて、手先も器用な日本人シェフが本気でベジタリアン料理を作ればそれは美味しいことでしょう。ただ、現時点ではチョイスも少ないうえ、「流行り物」として取り扱われているのか、メニューとして長続きすることがありません。

需要がない、と言ってしまえばそれまでですが、日本は今「観光立国」に向かって動き始めています。そうであれば、あらゆる面で日本に来てくれる観光客やビジネス客向けのサービスを充実させる必要があります。

欧米人と話していてよく話題になるのが、日本での食の「おもてなし」は一方通行過ぎる、ということです。欧米では東南アジアのレストランなどに行くと、スタッフから「出汁(だし)は大丈夫なのか」「アレルギーはあるのか」など食の嗜好を聞かれることがよくあります。それにあわせて、メニューをフレキシブルに変えてくれるわけです。それに対して、日本では提供されるメニューから料理を選ぶだけ。確かに美しくて、美味しいかも知れませんが、こちらの嗜好が考慮されることはありません。

私たち、ベジタリアンが願うことはただひとつ。どんな料理でも日本人の手にかかれば、世界一美味しい料理になることは間違いないのですから、ぜひ私たちにも対応して欲しい。まずは東京から、食の多様化が進むことを願っています!

ミサコ・ロックス コミック・アーティスト、モチべーショナルスピーカー

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コミック・アーティスト、モチべーショナルスピーカー

Misako Rocks! 本名高嶋美沙子。法政大学在学中に奨学金派遣留学で渡米。卒業後人形師を目指してNYに渡るも、うまくいかず挫折を繰り返す。NYで中学校の美術講師、ホームレスなどを経て、2006年コミック・アーティストとしてデビュー。

ディズニー・ハイペリアン出版社から2作出版。自身の初恋・留学体験をつづった"Rock and Roll Love"は、NY公立図書館が選ぶベスト・ティーンズ・ブックリストの一冊に。その後、ヘンリー・ホルト出版から初のシリーズ作"Detective Jermain vol1"を出版。英国漫画誌DFC Bug Clubの連載作品"Peach de Punch!"がアジア向けの英語教科書に採用される。

全米各地の小中高校や、コロンビア大学、プリンストン大学、メトロポリタン美術館などで講演会・ワークショップを精力的に開催している。

ホームページはこちら。著書に「理由とか目的とか何だっていいじゃん!チャレンジしなくちゃ後悔もできない!」「もうガイジンにしました」(ともにディスカバー・トゥエンティワン)。アメブロに4コママンガブログ「ミサコ・ロックス!NY毒舌ライフ」も連載中。

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