伊東信一郎・全日本空輸(ANA)社長--国際線が成長のカギ握る、アライアンスで路線拡充

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--需要喚起策はありますか。

定額給付の対象商品をつくりましたし、65歳以上のシニアの方向けに9000円で国内どこでも使える空席利用運賃も出しました。また、国際線も空席があれば安くなるような運賃など、いろいろな工夫をして、需要喚起を始めています。燃油サーチャージも4月から大きく下がりましたし、円高で特に国際線の旅行には追い風です。法人需要の回復がすぐには期待できない面もあって、何とか旅行需要でカバーしたい。

--人件費などコスト削減はどう進めていきますか。

コスト削減というより、全体のスリム化と効率化という二つの視点があります。本部制を見直そうとか、間接人員をスリムにしようとかであり、それが権限移譲や仕事の見直しにつながります。10年以降の事業規模拡大に向け人員を捻出する意味合いもあります。今の雇用の中で新しい拡大局面に対応したいです。

--10年には成田と羽田の首都圏両空港が拡張される。ビジネスチャンスに結び付くと……。

期待は大きいです。特に国際線が今後の成長戦略のカギを握ります。将来的に世界はもっとボーダーレスになるでしょうし、グローバルな経済の中で日本が生きていくのは自明の理です。景気の波動は当然ありますが、その中で航空が果たす役割というのは必ずある。随分遅れていた戦略機材B787(ボーイング)も来年の年明け早々には入ります。燃費効率が20%いいですし、足(航行距離)も長い。中型機としては唯一欧州でも米・東海岸でも飛べますから、この機材を使ってネットワークの充実を図りたい。大きな飛行機で大きいリスクを抱えなくていいですから、大いに期待しています。

--大型機のA380(エアバス)の導入も検討していましたよね。

現下の経済環境の中ではペンディングせざるをえない。早く景気が回復して、B747(ボーイング)も含めた大型機材が検討できるといいのですが……。

--成田は先日の米貨物便事故で滑走路が長時間封鎖され、欠航便が多数発生しました。成田の脆弱性が浮き彫りになった事故です。

あの滑走路1本だけだと、ほとんどマヒ状態になりましたね。やっぱり首都圏の国際線の発着枠は羽田が補完できる体制でないとおかしい。来年春に成田の1本が2500メートルに拡張されても、まだ長い距離は上がれないです。B747など大型機は飛び立てないですよ。3500メートルないとダメでしょう。

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