中国AIIBは、のっけから課題が山積している 「格付けなし」で、どう資金を調達するのか

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式典には参加国の首脳も参加した(写真:REUTERS/Mark Schiefelbein/Pool)

金総裁は日米にも引き続き参加を促すとしているが、「米国政府の態度は(AIIBへの参加に)積極的になってきた」ともらしている。日本については「アジア開発銀行への影響を心配しているのだろうが、住み分けは可能だし、アジアでのインフラの巨大ニーズはひとつの機関だけで対応できるものではない」と語り、なお参加を促す姿勢を示した。

1月17日の総裁就任会見で金総裁は、「国際開発金融機関であるAIIBの共用語は英語だ」として英語でのコミュニケーションを選んだ。国際機関としてのイメージづくりの一環だろう。第一号案件は独自に発掘した案件と、世界銀行やアジア開発銀行との共同融資案件の2本立てになる見通し。当初は今年前半の発表を見込んでいたが、金総裁は「今年末までに決める」という姿勢に転じた。

なぜ格付けなしで資金調達を行うのか

どう資金調達するのかは、AIIBの将来を占ううえで最大の試金石である(写真:REUTERS/Mark Schiefelbein/Pool)

気になるのは、AIIBが当面は格付けなしで資金調達をしようとしているところだ。債券で資金調達する国際開発金融機関にとって、信用リスクの程度を示す格付けは極めて重要だ。だが、金総裁は「(最上格の)トリプルA以外の格付けならいらない」という姿勢だった。

習近平指導部の面子を考えてのこととみられる。ドル資金は国内の金融機関からでも調達できるという考えだろうが、異例なことだ。足もとでは元安圧力が高まっており、ドル売り元買い介入のため外貨準備が大きく減るといった変化も起きている。どのように資金調達するのかは、AIIBの将来を占ううえで最大の試金石である。

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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