難民問題はもはや欧州だけの問題ではない 気候変動対策のような国際行動が不可欠

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過激派勢力は、いくつかの欧州の国々で政権をほとんど掌握するに至っている。ハンガリーとポーランドでは、反移民を掲げる政党が権力の座にあり、主流政党が反移民政策を取らざるをえなくなっている。

難民の対応に当たる欧州連合(EU)のプログラムは、たった190人を「移住させる」ことしかできていない。EUは愛国主義に過ぎ、そして無能であるように見える。

安全かつ合法的に難民が移住する手段の創出が最優先事項である。EUは入国を許可する移住者の人数について、もっと寛大になるべきであり、彼らの入国を手助けするための組織立った手段を講じるべきだ。

強固なグローバル体制構築を

また、国際社会は難民とその他の立場の弱い移住者を保護するための強固なグローバル体制を構築すべきだ。

先進国はその手段が再定住の支援であれ、人道的ビザ、学生ビザ、就労ビザなどの発給であれ、先進国で年間100万人弱の難民を受け入れられる合意に達すべきである。カナダ1国だけでも、5万人のシリア難民を今年再定住させると述べているが、この目標が達成可能なのは明らかだ。

同時に、国際社会もトルコ、ケニア、レバノン、ヨルダンなどの主要な受け入れ国における難民の地域統合を支援しなければならない。

移住者を保護するシステムを構築するために、気候変動のための対策と同じような国際的な行動を16年に起こさなければならない。2000万人の難民と、立場の弱い数百万人の移住者の生死を分ける問題であり、全世界の民主主義社会の健全さを問う深刻な試練でもあるのだ。

週刊東洋経済1月23日号

ピーター・サザーランド 国際連合事務総長特別代行

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ピーター・サザーランド / Peter Sutherland

ゴールドマン・サックス・インターナショナル会長。国際連合では2006年から国際移住に関する特別代行。
 

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