新日本監査法人、新理事長が歩む"茨の道" 新トップ選任は社外ガバナンス委員会が主導

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英公一(はなぶさ こういち)理事長以下の執行部には自らの責任を明確化する姿勢が乏しく、当初は、現執行部の中から後継者を選任するというベクトルが社内で働いていた。

ところが、今年1月半ば、そんなムードは一変する。厳しい行政処分の背景にある当局の問題意識が正確に伝わりだしたからだ。要するに、遅まきながら同社内には、深刻な経営問題との認識が醸成され始めたのだ。

その結実が1月18日から開始された新理事長選任手続きにほかならない。同社は従来、理事長選には経営陣、評議会議員で構成する指名委員会が、多くの候補者からヒアリングして候補者1人を選任、信任提案する方式がとられてきた。その選出方法を見直したのだ。

新トップの選任方法でも、過去から決別

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今回は、指名委員会の構成メンバーから現経営陣である6名の代表社員は除外され、社外ガバナンス委員会のメンバーである斉藤淳(前日本取引所グループCEO)、橋本尚(青山学院大学大学院教授)、森山大輔(弁護士)の3氏が入った。

この指名委員会のトップには橋本氏が就任。経営建て直しのためには、これまで同社の舵取りをしてきた経営陣を除外し、外部の目で次のトップを選ぶ判断をした。

指名委員会は先立って、候補者と位置づけた中堅幹部などに、考え方などを確認するヒアリングを続けていた。18日には、3名の候補者を社内で公表。副理事長以下の執行部メンバーについては、新理事長と指名委員会が協議して、2月半ばにも選出する予定だ。

今後、焦点となるのは新執行部に、英・前理事長体制の執行部メンバーが残留するのか、という問題だ。内部の論理と決別し、社外ガバナンス委員会に決定を委ねたことを考えると、新しい経営体制が過去の手垢がつかないものになりえる要素はある。

新執行部には、株式会社の独立社外取締役のような外部の有識者が加わる可能性も期待できるだろう。

その明暗を決定するのは新日本監査法人で働くパートナーを初めとする公認会計士たちだ。彼らは20日にも明らかになる投票結果でどういう審判を下すのだろうか。

(撮影:尾形文繁)

浪川 攻 金融ジャーナリスト

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なみかわ おさむ / Osamu Namikawa

1955年、東京都生まれ。上智大学卒業後、電機メーカー勤務を経て記者となる。金融専門誌、証券業界紙を経験し、1987年、株式会社きんざいに入社。『週刊金融財政事情』編集部でデスクを務める。1996年に退社後、金融分野を中心に取材・執筆。月刊誌『Voice』の編集・記者、1998年に東洋経済新報社と記者契約を結び、2016年にフリー。著書に『金融自壊――歴史は繰り返すのか』『前川春雄『奴雁』の哲学』(東洋経済新報社)、『銀行員は生き残れるのか』(悟空出版)などがある。

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