仕事ができる人は「物事の定義」を変えている アイデアが出ない人に教えたい「思考法」

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私自身が実践した、もっと身近な例を挙げましょう。私はスピーチの練習をする際に、カラオケボックスを利用します。もちろん1人です。

カラオケボックスを「歌を歌う場所」と定義してしまうと、こういう利用法にはたどり着きませんが、「誰にも邪魔されずマイクが利用できる個室」と定義すれば、ほかの利用方法がすぐに思いつきます。

このエピソードに「うわ! すごい斬新な発想ですね!」とは思いませんよね。誰でもできる、「確かにそうだね」「なるほどね」「あるある」そんな反応が返ってくるレベルの発想です。

アイデアを出すという行為は、決して難しいものではないのです。

先述したように、数学を正しく学んだ人は「定義」がいかに重要かを知っています。たとえば、議論が混沌とし着地点が見えない会議があったとします。数学的な人は、そのような場で「そもそもこの会議の定義はなんだ?」と問題提起で きます。 「この会議=◯◯◯を決定する場」という定義がしっかりなされていれば、思考が飛躍せず論理的にゴールに向かえることを知っているのです。

それゆえ、逆に「定義」を変えてしまえば思考を飛躍させることができることも知っています。

ゆえに、数学的な人は斬新さを求める局面では必ず「定義」にアプローチします。そこを疑うことで、誰も気づかなかった盲点を見つけることができたりするのです。

「たまたま思いついた」から卒業せよ

そろそろまとめましょう。アイデアを出した人がよく言うせりふのひとつに、「たまたま思いついた」があります。でも、それでは再現性がありません。

この人が明日、まったく別のテーマで何か斬新なアイデアを出せる可能性は、おそらく低いでしょう。

偶然ではなく必然に。つまり、正しい手順を踏んでアイデアを出せるようになりたいものです。

そのための最初の手順が、数学的なアプローチをすること。つまりそもそもの「定義」を変えることです。

誰かが定めた定義の中でいくら考えたって、いつまでたっても新しい発見など生まれるわけがありません。そうではなく、誰かが定めた定義を変える人が、新しいアイデアを生み出せる人なのです。

あなたも明日からは常識を疑い、既存の定義を変えてしまうくらい大胆な発想を持って考えてみてはいかがでしょうか。

 

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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