立ち往生する民主党の不安

立ち往生する民主党の不安

塩田潮

 事件発覚からちょうど1ヵ月が過ぎた。だが、小沢民主党代表の進退問題は何も進展がない。逆風の収まり具合、選挙情勢、辞任のプラス・マイナス、対検察闘争などをにらみながら「長考」を続けているように見える。一方で、「愚図」は昔からの隠れた一面で、それが出たという指摘もある。小沢氏本人は3月31日、「次期総選挙で勝てるかどうかを最終的な判断基準としたい」と語った。だが、もう一つ、進退判断のポイントがある。政権選択選挙と言われる次期総選挙で、民主党は誰を次期首相候補と明示して戦うかだ。与野党とも、選挙前に政権構想や基本政策、マニフェスト、諸課題に対する処方箋などを示すことが重要だが、それだけでなく、首相候補は誰かを明確にする義務がある。

 国民の民主党離れは大きいのに、党内をのぞくと、交代論は必ずしも大きくなっていない。日に日に票が逃げていくので一刻も早く辞めてもらいたいという気持ちと、辞任後の党内の混乱と自壊が恐ろしいという懸念とが錯綜している。民主党の立ち往生はこの2つの不安心理を清算できないのが原因だ。だが、最終決着の方向ははっきりしている。

 多くの国民と同様、おそらく民主党の人たちも共通して抱いているのは、次期総選挙で小沢氏を首相候補とする道はないという認識だろう。続投容認の場合でも、選挙に勝つため、あるいは選挙までの話で、政権獲得後の首相は別の人物で、というのは暗黙の共通認識となっているように映る。もしかすると、小沢氏自身、その覚悟ができているのかもしれない。だとすれば、進退問題は、首相候補の選定とその方法、党首と首相候補の2本立て(自民党なら「総総分離」)という実験の是非、党の統一性と政権担当能力、小沢氏の「辞任カード」の切り方、ポスト小沢といった課題と関わってくる。小沢氏はそこを見通した上の「長考」なのか、それともただの「愚図」なのか。残された時間は長くない。
(写真:今井康一)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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