ジョン・ウー --レッドクリフを作った男の執念【上】 


 映画監督ジョン・ウー、62歳。2000年公開の『M:I−2』ではその年の世界興行収入トップの5・5億ドルを記録、まぎれもなく世界トップレベルの監督のひとりだ。昨秋公開の『レッドクリフPartI』も日本と中国でそれぞれ興収50億円をたたき出した。

だが、ウーに会ってみると映画監督にありがちな気難しさはみじんもなく、笑みを絶やさない。多くのマスメディアから取材され、同じ質問を繰り返されてうんざりしているはずなのに、インタビュー終了後には「あなたとお話しできて気持ちが落ち着きました」--。これで相手の心をわしづかみにしてしまう。

『レッドクリフ』のメイキングによれば、撮影中にウーが人前で怒りの表情を見せたのは、わずか1回だったという。だが、映画監督ジョン・ウーには別の顔がある。「監督の要求水準を満たせなければ、笑顔でお疲れ様、ありがとうと言いながら、容赦なくクビを切る」と、ある製作スタッフは明かす。

撮影は困難を極めた。当初主演予定だったチョウ・ユンファがクランクイン当日に突然降板、天候不順による撮影延期、ロケ中の事故……。相次ぐトラブルで潤沢だったはずの製作費はあっという間に底をつき、ウーが私財10億円をはたいてようやく完成にこぎ着けた。だが「ありガネをかき集めて」というほどではない。「不測の事態に備えて6年前から投資用不動産を買っておいて、ピーク時に売り抜けた」(同)。

温和にして冷酷、かつ用意周到。ウーには複数の顔があるが、ただ一つはっきりしていることがある。それは、作りたい映画を作るという強い執念である。

このようなウーの人格はどのように形成されたのか。その生い立ちから見ていきたい。

迫害をおそれ香港へ 教会の援助で進学

ウーは1946年、中国・広州で生まれた。父親がキリスト教信者だったため、49年に中華人民共和国が成立すると、迫害をおそれた一家は香港に移住した。学者だった父の影響を受け、「子どものころは神父か教師になりたかった」と言うウーだが、映画が大好きで、勉強よりも映画を見る時間のほうが長かったという。

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