地産地消ブームで「切り花」ベンチャーが熱い 投資家も注目する米ファームガールの強み

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5月に始めた全米発送は、今ではビジネスの3割を占めるまでになっている。ステンベルは来年~2年後くらいをメドに、東海岸に支店を作る計画を立てている。だが10年に起業したころ、業界の多くの人々のファームガールに対する目は冷たかった。

国内の切り花販売の流れを変えることはできるのか

サンフランシスコにあるファームガールフラワーズで花を運ぶ女性(写真:Carlos Chavarria/The New York Times)

「当時私は、これはサンフランシスコが現実の壁に囲まれている証拠だと思っていた」と、カリフォルニア切り花委員会(州内の切り花生産の振興を目的とした州機関)のケーシー・クロンクウィスト委員長は言う。国内における切り花販売の流れを変えることは「タイタニックを転覆させることに近い」とクロンクィストは言う。

大手の切り花販売業者であれば、さまざまな価格帯のさまざまな花束を売っているし、プレゼント用のオプションもいろいろと用意されている。「大手に比べれば規模はさほど大きくないが、ファームガールはあなどりがたい力をもっている。同社のやり方を支持する消費者がいるということを、大手企業に見せつけている」とクロンクィストは言う。

だが業界内には、いまだにファームガールの未来に懐疑的な人々もいる。調査会社プリンス&プリンスのトーマス・プリンス社長に言わせれば、ファームガールのような新興業者は何年かおきに出てきては「ニッチな市場では成功を収める」。だがビジネスを全米規模に広げようとすると、輸送の問題にぶつかったり手頃な価格を維持するのが困難になるという。「生産地が近いカリフォルニアでしか通用しないコンセプトだ」と彼は言う。

ステンベルは自分の蓄えを使って起業したし、事業拡大に際しても外部の投資家の関心を集めることはできなかった。同じ業界にはブルームザットやブルームネーションなど、投資家から出資を受けた新興企業もあるというのに。

ステンベルによれば、投資家が出資をためらう理由はファームガールのビジネスモデルにあるという。これまでステンベルが話をした投資家たちは、正社員ではなく契約社員や配達員を雇って福利厚生費を低く抑えるよう求めたという。だが、それはステンベルの流儀には合わなかった。

ファームガールのスタッフ(配達担当者を含む)は46人全員が正社員で、健康保険にも社の費用で加入している。これは新興企業としてはかなり異色だ。

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