米専門家が説く「暴走北朝鮮」への対抗方法 金体制を揺さぶる効果的な方法がある

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──つまり何を爆発させた可能性が高いのか

おそらくは通常の核分裂装置、広島型のような原爆だろう。それでも決して小さなものではない。これがソウルで投下されれば30万人もの人が死傷するだろう。しかし技術的な意味では水爆ではないし、水爆が引き起こす破壊力には遠く及ばない。

ブルース・ベネット(Bruce Bennett)/ランド研究所の上級防衛アナリスト。ランド国際安全保障・防衛政策センターに所属。北東アジア軍事問題スペシャリスト。同地域の安全保障環境、韓国軍事力の将来必要条件、朝鮮半島軍事バランス、北朝鮮の生物化学兵器の韓国・日本への脅威、北朝鮮崩壊などについて調査研究をしている。米国防長官事務所、駐日・駐韓米軍、米太平洋中央司令部、日本の自衛隊や韓国軍、韓国国会などに勤務した経験がある

──北朝鮮はこれまで何回も実施している核実験をどうしてわざわざ今実施したのか。

北朝鮮は、今回の爆弾をミニチュア化された「小型兵器」だと述べている。これは通常、弾道ミサイルに搭載される兵器であることを意味する。米国がもともと開発した原子爆弾はあまりにも巨大だったので、投下地点まで運ぶのに大型爆撃機を必要とした。しかし、この兵器は弾道ミサイルに搭載できるほど小型化することが可能で、北朝鮮はそれを狙っているのではないか。

今回の爆発の大きさではそれが小型兵器だったのかはわからないが、それこそ彼らが主張したかった点かもしれない。つまり(爆弾を)ミサイルに搭載できるところまで到達できた、それは偉大な功績、進化である、と。

──北朝鮮はおそらく、米国や日本が水爆ではないと主張できるだけの専門的な証拠を集められることも知っているだろう。それなのにどうして、こうした見え透いた「でまかせ」を宣伝するのだろうか。

北朝鮮の公式発表がなされたのは実験の2時間後だったことを忘れてはいけない。この段階で北朝鮮の高官は知らなかった可能性がある。もっと重要なのは、どうして北朝鮮がこのタイミングで核実験を行ったか、であり、われわれはそれについて冷静に考えなければならない。

中国による北朝鮮軽視にいら立ち

──最も考えられる理由は?

北朝鮮、とりわけ若いリーダーである金正恩第1書記は現実的な問題に直面しているのではないか。韓国と中国の首脳は6回も会談しているのに対して、金正恩体制になってから北朝鮮と中国の間には一度も首脳会談が開かれていない。北朝鮮のエリート高官にとってこの事実が示唆するのは、中国は金正恩を力のない、重要でない人物と見ているということだ。

北朝鮮は中国に対し、金正恩を招待してもらうよう懸命に働きかけてきたが、今や中国は彼を招待する必要はないとみている。金正恩はその代償を払おうとしているわけだが、大事なのはなぜ彼がそうしようとしているか、ということだ。

その背後には、2つの可能性がある。

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