南紀白浜、温泉以外でも楽しめる観光地に町ぐるみで変身中《特集・日本人の旅》

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 まず、町内6カ所の外湯巡り、また旅館組合加盟の旅館・ホテルの内湯17カ所を楽しめるルートを整備するなど、旅館から出やすくなるような仕組みを整えた。

また、シャトルバスなども旅館組合が走らせている。観光客の玄関口から町内中心部へのアクセスが、決して便利ではないためだ。たとえば、白浜の玄関口となるJR白浜駅は直通特急が停車するなど、観光客数の7割を占める関西地域からは便利。だが、駅から町の中心である白良浜地区までは約3~4キロメートル離れているため不便なのである。

パンダとクエが目玉 町全体で客を取り込め

白浜町観光協会によると、白浜の観光客数は年間320万人前後。うち、宿泊客数は200万人とこの十数年はほぼ横ばいが続く。「2~3年の間に、この1割は伸ばしたい」というのが、白浜の観光関係者の目標だ。

一方で、観光客数が横ばい続きであっても、実は旅館協同組合加盟の宿泊施設の客単価は08年、前年比で500円ほど増えた。その背景にあるのは、「まさにクエ、パンダ効果」(片田氏)だ。

「幻の魚」と称されるほどの珍味とされる「クエ」と、町内のテーマパーク「アドベンチャーワールド」に08年9月に生まれた双子のパンダ「梅浜(めいひん)」「永浜(えいひん)」が人気を呼び、貴重な名物になっているのだ。

特にクエは、観光関係者が同町にある近畿大学水産研究所とともに十数年かけて名物に“仕上げた”逸品。クエは「幻の魚」と言われ、その味を求める観光客は多かったが、これまではすべて天然モノで安定供給に問題があった。

それを、近畿大学水産研究所が養殖に成功。さらに地元の観光業関係者が試食を続けるなどで天然モノ以上の味が出せるようになり「紀州本九絵(クエ)」としてブランド化。07年から本格的に提供できるようになった。紀州本九絵は白浜に来ないと食べられないようにするべく、和歌山県外に出荷しないことで、関係者に協力してもらっているという。地産地消を通じた集客策の一つにするためだ。

観光協会は「当面、クエとパンダを中心に白浜の魅力をアピールしていく」という。それには、「旅館単位ではなく、町全体を温泉リゾート地としてお客を呼び込めるように再生する必要がある」(片田氏)。今後は、JR白浜駅、南紀白浜空港を含め、町内の各名所を便利に楽しく回れるようなルートも開発するという。

温泉地としての歴史に安住せず、これからもさまざまな仕掛けをどう繰り出すか。白浜はその回答を模索している。

(週刊東洋経済)

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