関空・新トップが明かす「2兆円落札」の勝算 オリックス流運営で日本の空港は変わるか

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応募の決め手は大きく2つあった(撮影:尾形文繁)

――応募の決め手は何だったのか。

大きなポイントが2つある。1つはパートナーの存在だ。44年という長期で信頼できるパートナーが必要だった。

途中で事業継続が困難になったり、撤退したいとなるのは避けたい。こちらに頼りきりでも困る。コンセッション第1号案件として失敗は許されないという思いに立った時に、強い会社と組めば成功確率を高められると考えた。

バンシ・エアポートという会社自体は空港オペレーターの中で世界的大手ではないが、同社を含むバンシ・グループは巨大な建設企業グループだ。創業から約120年と歴史はオリックスの2倍以上あり、上場企業で資産規模も大きい。従業員は18万人を超える。利益規模、格付けを見ても、オリックスと対等に組めると判断した。

非正規職員も含めると、新関空会社から約3500人が関西エアポートに転籍する。これまでは国が100%を出資する会社で、公務員に近い立ち位置だった職員の皆さんの不安は大きいだろう。新しい経営陣の考え方をきちんと伝えなければならない。

4月1日から同じ釜の飯を食う仲間になる人たちとの信頼関係を、残り3カ月で築いていく必要がある。新会社の副社長に就いたエマニュエル・ムノント氏もナイスガイで、私の弟みたいな存在。私と彼についていけば面白い会社になるのではないか、と思ってもらえるようにしたい。

空港は運営会社だけで運営できない

――もう1点は?

資金調達だ。1兆7000億円の資産とそこから生むキャッシュフローで2600億円に上る資金調達がきちんとできるのかが、大きな課題だった。日本の銀行を中心にプロジェクトをよく理解してもらい、かなり前向きに検討してもらった。新関空会社も銀行への説明に協力してくれた。

――約30社の関西企業が2割を出資する。どういった役割を担うのか。

新関空会社には関西経済連合会(関経連)を中心とした財界からの支援もあった。民営化にあたっても、関経連の支援がなければうまくいかない。そもそも空港運営は運営会社だけで自己完結するものではなく、国や自治体、そして地元経済界がまとまる必要がある。

正直なところ、出資に応じてくれるのは20社程度だろうと思っていた。だが、声をかけた主要企業のほとんどが「応援する」と言ってくれた。

具体的にはこれから詰めるが、出資企業から1人、社外取締役に就いていただきたいと考えている。われわれは上場するわけではないが、事業が公共財の運営である以上、透明度を高くしなければならない。外部からの経営のチェックが必要だ。

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