全国規模の観光キャンペーンの舞台裏、JRと地元がタッグを組んで仕掛ける《特集・日本人の旅》

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トライアルで改善 地元への周知も重要

プレイベントは、宣伝範囲は地元と首都圏に限られるものの、県内各エリアから挙がった企画を、本番とほぼ同じように実施する。いわば、本番に向けたトライアルだ。今回のDCでは、特にこれを重視し、活用した。イベント終了後にさまざまな調査・分析を行い、本番に向けた改善点を議論したのだ。

たとえば、人気企画の一つ「江戸時代の豪農屋敷で羽釜で炊いたコシヒカリを食べる」というイベント。期間中、客は予想以上に多く集まったが、国の重要文化財に指定されている施設のため、入場を制限せざるをえないという反省点があった。そこで本番では、近隣の民宿でも同様の企画を実施し、できるだけ多くの人に楽しんでもらうという改善案が出された。地域から挙がった企画は実に300以上。その一つひとつに、こうした綿密な計画があるというわけだ。

09年が明け、本番まで1年を切ると、今度は地元住民に向けての周知徹底が重要になってくる。「今の旅に求められるのは、その土地の文化、歴史に触れること。特別なものを作る必要はないが、地元住民に観光客はこういうもので喜んでくれるということを教える必要がある」(JR東日本新潟支社の小池裕明・販売課長)。道行く観光客に「この辺に何かおいしいものはないですか」と聞かれたときに、「オラ知らねえ」では、DC受け入れ地の住民としては失格だ。世間話でもいいから、おしゃべりをし、普段食べているものを紹介するだけでもいいのだという。

昨年の宮城DCでは、観光列車が通ると、そこで農作業をしていた沿線の住民がいったん手を止め、乗客に向かって手を振る姿が見られた。また、町の銀行にもDCののぼりが立てられ、観光客に道案内を行っていたという。「新潟でも、こうした住民によるおもてなしができたらいいと思っている」(小池課長)。

新潟県は、09年度の観光客数で前年比5%増という目標を立てた。だが、本当の目標はその先にある。今回のDCをきっかけに、全国の新潟ファンをどれだけ増やせるか。「勝負は、新潟県らしさをいかに出せるか、にかかっている」桑原氏の言葉にも力がこもる。

効果絶大の大河ドラマ「直江兼続」に乗れ!

「思いがけず、盆と正月が一緒に来た」。新潟県の観光関係者は口をそろえる。新潟は、今年のNHK大河ドラマ「天地人」の舞台でもある。放送が決定したのは、DC開催が決まった1カ月後、07年4月のこと。08年「篤姫」の鹿児島、07年「風林火山」の山梨など、大河ドラマの放送年はその舞台となった土地に観光客が殺到するのが、ここ数年の決まりのパターンだ。

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