北朝鮮の実験失敗は安堵すべきことではない 核開発をやめさせるにはどうしたらいいか

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こうした状況下重要なのは、核ミサイルの配置とさらなる開発についてかなり進んだ議論がすでに行われている点だ。今後は米国、韓国、日本の強調が大切になる。

一方中国は、米国が北朝鮮に対する抑止力を増大させようとしていることなど全く信じる気はない。それどころか、中国を抱き込んで、何かあれば中国の核の抑止力を無効にするための口実としか見ていない。

これが、戦略的な動きが信じられないほど複雑になっている理由だ。チェスの1手は北朝鮮への直接的な対応としてスタートするが、3手、4手までにはこの地域の無秩序ぶりを証明するような複雑な状況に陥るだろう。

米中日は軍事技術の流入阻止で協調を

──米国と日本は今回の実験についてどう対応すべきか。

国連安全保障理事会の5つの常任理事国には、北朝鮮の最近の核実験は非難に値するという強い意見の一致がある。再度の制裁措置が必ず発動されるはずだ。北朝鮮に対して義務と責任に従うよう勧告があるだろう。

中国と北朝鮮の商業関係から、好ましくない部分を取り除くチャンスはある。これは通商をストップすることではない。中国はそんなことはしないだろうから。中国はこの脆い政権を弱体化させて、国家体制崩壊を招くのを非常に懸念している。

中国の指導者は非常に難しい立場にある。商業と軍事に併用できる技術や部品が北朝鮮に流入するのを制限するには日米との協調が必要だが、中国はそれを積極的にやる気はないからだ。

中国では税関検査官の訓練も非常に重要であり、日米韓との協調が助けになるだろう。カギになるのは、北朝鮮のミサイルプログラムに併用可能な部品が流入するのを妨げることだ。これはまだ試みられていない。核実験に対して米中日が抱いている共通の怒りを行動に変えられるかどうかは、リーダーシップ次第なのだ。

ピーター・エニス 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)

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Peter Ennis

1987年から東洋経済の特約記者として、おもに日米関係、安全保障に関する記事を執筆。現在、ニューズレター「Dispatch Japan」を発行している

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