定番だけど深い!サンドイッチ界の劇的進化 「ひと目」「ひと口」で多くの人をわしづかみ

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「すしのシャリと同じでサンドイッチはパンありき」と考える成瀬さん。365日(代々木八幡)、カタネベーカリー(代々木上原)、タルイベーカリー(参宮橋)の3店からバケットを毎日調達する。いずれも渋谷区にある有名店。立地が決まってから探し出し、この3店に行き着いた。バターはフランス産、野菜などは信頼を置く卸から購入している。ハムを決めるのがいちばん大変だったという。加工ハムで成瀬さんがOKと思えるものがなかったからだ。結果、「上品でおいしくてパンを生かしてくれる」パルマ産生ハムを使っている。

すし職人ならではの玉子サンド

途中から加わった「すしやの玉子サンド」は、平日20~30、週末は60~70個出る人気商品。カタネベーカリーのコッペパンを使い、きれいに焼いた卵焼きをはさんだシンプルなものだが、卵焼きに使う出汁は一般的なかつお節ではなくマグロ節。それが、ほかにない味わいと香りにつながっている。

「天候要因を除けばなだらかな右肩上がりで、本当にちょっとずつ拡がってきた。僕らが正しいと思うことを、時間がかかってもいいからやっていきたい。CAMELBACKはらくだの背という意味ですが、二つのコブにわれわれ男二人の夢をつめて、ゆっくり歩いていきたいという意味を込めています」

自分ならではのアイデアとテクニックを生かしたい

成瀬さんはもともと、いずれアメリカでサンドイッチ屋を開きたいという夢を持っていた。米国と日本ですし職人として経験を積んだのは、資金稼ぎのためでもあった。ハンバーガーショップでも経験を積み再度の渡米に向け準備をしていたが、リーマンショックのあおりで頓挫。そんなときに、このままウダウダしていても仕方ない、自分たちの夢を形にしようとスタートしたのが「CAMELBACK」なのだ。

「これからですか? やっぱり魚を使ったメニューを増やしたい。玉子サンドもそうですが、僕ならではのアイデアとテクニックが使えるものがいいですね」

今回取り挙げた3人には共通項がある。それは、ブームやトレンドに関係なく、シンプルに「自分が食べたい、作りたい」から作っていることだ。それぞれのリアルな生活と経験から生まれた、独創性にあふれたサンドイッチ。多くの人をひきつけているのは、単においしいだけではない。そこに何かしら物語を感じられることが、隠し味となっている。

高橋 志津子 東洋経済 記者

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たかはし しづこ / Shizuko Takahashi

上智大学法学部国際関係法学科卒。東洋経済新報社に入社後は、会社四季報、週刊東洋経済、ムック、東洋経済オンラインなどさまざまな媒体で編集・執筆を手掛ける

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