定番だけど深い!サンドイッチ界の劇的進化 「ひと目」「ひと口」で多くの人をわしづかみ

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大沼夫妻は、本を出すなら自分たちの記念になるものにしたいと考えた。「専門家の知り合いや友だちに協力してもらい、いろいろな沼サンを紹介し、読者のみなさんに自分なりの沼サンを見つけてほしい」というコンセプトで作ったレシピ本『沼サン』は、発売後すぐ2度増刷するほどのヒットになった。

沼サンの特徴はボリューム。基本はキャベツ+タマネギ+ベーコン+スライスチーズを6枚切り食パン2枚でぎゅっと挟むのだが、キャベツを3枚半(140グラム)使う。「えっ、こんなに多いの」と、千切り途中で不安になるくらいの量だ。

なぜ、これほどの人気を集めたのか。

キャベツをたっぷり挟んだサンドイッチ

話は、陶芸家としての修行時代にさかのぼる。道行さんが朝食でも野菜をたくさん取るにはどうしたらいいかと試行錯誤して編み出したのが、キャベツをたっぷり挟んだサンドイッチだった。キャベツを選んだ理由は明快で、一年中どこの土地でも手に入れやすく、安価で、炒め物などいろいろな料理に使える万能野菜だから。

もちろん、人気の背景には健康志向で野菜をたくさん取ろうというトレンドがあるし、インスタグラムなどSNSの普及なしにはありえなかった。特にインスタのユーザーは女性が多く、アップされる写真は食べ物関連が多い。前出の草深編集長によると、トレンドの芽を見つける上で、インスタ検索は欠かせないものになっているという。

草深編集長は「今はやるレシピには特徴がある。それは、型やテンプレートはあるが、自分らしくアレンジできるかがポイント」と語る。まさに沼サンはその典型だ。「男の時短料理」が、こんなに脚光を浴びるようになるとは、愉快な話である。

新鮮な野菜のおいしさをもっと知ってほしい

2015年10月末。東京・渋谷区にあるレストラン『WE ARE THE FARM(代々木上原)』の軒先に登場した小さなサンドイッチスタンドがある。『POTASTA』だ。テイクアウトのみで、午前中で売り切れることも多い。野菜や豆、芋といった食材や惣菜がたっぷり使われており、見た目もインパクトがある。

「自家農園を持つWE ARE THE FARMを手伝っていたこともあり、野菜のおいしさを私自身がよく知っている。そのおいしさを人にどう伝えたらいいかを考えた試行錯誤した結果、サンドイッチでおいしさと華やかさを出すことにしました」

そう話すのが、作り手の横地尚子さんだ。モデル、タレントとして活躍しているほか、自身の経験をもとにした著書『魔法のダイエットノート365days』もあり、食や健康への関心は高い。サンドイッチショップを出したいというより、野菜で何かを伝えたい、という思いが出発点にあったのがおもしろい。

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