"食通世代"が、米国の食市場を激変させる! 「ホールフーズ」の次には何が来る?

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もちろん中身も重要ですが、成分や製造過程に関する情報の透明性、さらに企業のあり方についても変革を迫られています。ミレニアルズのライフスタイルや嗜好、価値観が、大企業、そして米国全体の食を変えつつあります。

食料砂漠の存在

しかし実はこうしたミレニアルズの食意識にも大きな格差が存在しています。

フーディのミレニアルズはどちらかというと、食のエリートたちです。この連載の中で毎回必ずお伝えしていますが、ミレニアルズの中でも大きな格差があり、これは食に関しても同様です。

まずミレニアルズの5人に1人は貧困ライン以下で生活しており、常に食料の不足に直面しています。前回も述べたように、その多くは黒人やヒスパニックなどのマイノリティです。こうした低所得者が住む地域には「食料砂漠問題」があります。

特に大都市の貧困エリアにはスーパーマーケットが非常に少なく、住民は近所の小さな食料品店で買い物をするわけですが、こうした店では生鮮食料品はほとんど売られていません。結果、缶詰やインスタントなどの加工食品が食生活の中心になり、必要な栄養を摂ることができないため疾病の原因になるなど、「食料砂漠問題」は深刻です。

こうした状況を解決するために、政府が補助金を出してスーパーマーケットをオープンさせたり、ボランティアが学校に学校に農園を作るなどの対策をしていますが、目に見える効果は出ていないのが現状です。

一方で注目を集めるオーガニックやグルテンフリーなどの「健康な」食品も、値段が高いためにこうした低所得者の口には入りません。「健康は食から」という大前提も、低所得者には手が届かないものとなっているのです。

こうした状況の中、ウォルマートなどの超大型スーパーが、オーガニックフードを積極的に抑えた値段で提供し始めています。オーガニックやナチュラル・フードは高い、というイメージが近い将来変わることが期待されています。

今回の「食」というテーマに関しては、日本のさとり世代とミレニアルズに大きな違いが見られたように思います。

日本のさとり世代の「食」に関する行動は、一般的に、「とにかくコスパ重視」と言われています。あるいは、SNS映えを狙って時に見栄えのする食べ物を写すために「贅沢消費」をする、と言われています(これはミレニアルズも同じのようですが)。

健康志向、強いオーガニック志向、倫理性の強い企業の食材を買う、外食にお金をかける、生産者を気にする等、ミレニアルズに見られる「食」意識は、いずれ、日本のさとり世代にも見られるようになるのでしょうか。

原田 曜平 マーケティングアナリスト

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はらだ ようへい / Yohei Harada

1977年生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂に入社。ストラテジックプランニング局、博報堂生活総合研究所、研究開発局を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー。2018年よりマーケティングアナリストとして活動。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。著書に『平成トレンド史』『それ、なんで流行ってるの?』『新・オタク経済』『寡欲都市tokyo』などがある。YouTubeはこちら

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シェリー めぐみ ジャーナリスト、テレビ・ラジオディレクター

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横浜育ち。早稲田大学政経学部卒業後、1991年からニューヨーク在住。

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