「正露丸」の大幸薬品が”家電”に進出した理由 空間除菌「クレベリン」は信頼を取り戻せるか

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クレベリンLEDには、大幸薬品にとっていくつかのメリットがある。1つは「クレベリン」を中心とする感染管理事業の売り上げの平準化だ。

主力製品の「クレベリン ゲル」は風邪やインフルエンザが流行する冬場に売り上げが偏る傾向がある。家電向けカートリッジ販売であれば、扇風機など夏向けの製品への搭載や定期的なカートリッジ交換によって、年間を通しての販売が見込める。

もう1つは、製品を共同開発した会社が製品の広告宣伝をする中で、クレベリンLEDの広告宣伝もしてくれること。大幸薬品は販促コストをかけずに、クレベリンブランドの認知度を高めることができる。

二酸化塩素はウイルスや細菌の構造を変化させ、機能を低下させる効果を持ち、水道水の消毒にも使われている。

常温では気体だが、大幸薬品は二酸化塩素ガスを液体に封じ込め、低濃度のガスを安定して発生させる技術を開発した。

空間除菌製品は成長の余地が大きい

「クレベリン ゲル」は消費者庁から、多様な生活空間における空間除菌効果の「合理的な根拠」がないとされた(写真はクレベリンLEDを搭載した加湿器)

大幸薬品は2005年にクレベリンを発売し、口コミやテレビCMの効果で6割のトップシェアを獲得した。風邪やインフルエンザにかかりたくない、受験生や妊婦、子どもや高齢者のいる家庭向けのニーズをつかんでいる。

二酸化塩素関連製品の国内市場規模は現状約70億円で、アップダウンはありながらも拡大基調にある。

柱の正露丸は国内市場の停滞で大幅な伸びが見込めない中、空間除菌製品は伸びしろの大きい成長事業として、大幸薬品の将来を背負っている。

だが、大幸薬品の悲願は、空間除菌製品の信頼回復にある。2005年の発売から順調に売り上げを伸ばしてきたクレベリンに、逆風が吹き始めたのは2010年11月のことだった。

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